2012年9月

第78回
最高のプレゼント後編


はたしてバスから降りてきた息子は、拍子抜けするくらい身軽だった。
女の子たちがバックの他みやげ袋まで抱えているのに比べ、息子は出かけて行った時のまま。
いや、例のおやつ袋がなくなったせいか、かえって少なくも見える。

それでも家に着くと、エナメルバックからがさごそとみやげを取り出し始めた。
「これは、おじいちゃんに」と、津軽のあめ。
「それからぁ~」
いよいよ私たちの番だ。ごくり。かたずを飲んで見守る。
「これ、みんなにひとつずつ。リンゴジュース」
「へえ、リンゴジュースか。青森らしいね」
「うん、安かったから!ひとつ130円」
そう言えば、「修学旅行のしおり」には「おみやげリスト」なるページがあった。
その「かぞく」の欄には「安いもの」と記されていた。これだったのか・・・。

「いじょう、おわり!」
「あれ?お小遣い、ほかに使ってこなかったの」
「うん。ためて、ほしいものかおうと思って」
そうだったのか。えらいぞ息子。
それでも、もう少し何かあってもよかったぞ。

「じゃ、中のもの片付けようか。これは明日持っていくもの、こっちは洗濯だね…」
その時、バックの中にちらりと見えたものが。
赤い、小さな、かわいらしい箱だ。
「あれ?まだ何か・・」と言った瞬間、息子は「自分でやる!」。
ひったくるようにバックを奪い、自分の部屋へ行ってしまった。
あやしい。

その後は、ホテル鹿角で出た夕食のこと。
先生が見回りに来て、慌てて布団にもぐったこと。
平泉で雨に降られ、配られたカッパを着たらミニーちゃんみたいだったこと。
そんなことを矢継ぎ早に話すわ話すわ。
さっきの「赤い箱」に触れられたくないのだろうか。
ますます、あやしい。
そしてその夜は、とろけるように眠ってしまった。

さて翌日。
「おはよう」と起きてきた息子が「あ!」と部屋に引き返した。
そして戻ってきたその手には、あの「赤い箱」が。
「お母さん、これ」
「なあに?」
「たんじょうび、おめでとう」
「え・・・?」
「お母さん、今日たんじょうびでしょ。
ぼく、プレゼント何にしようかな~って、ずっと考えてたんだ。
昨日見られそうになってあせったよ」

そうだったんだ。
ありがとう。
疑ってごめん。
何か言おうとするのに、胸がいっぱいで言葉にならない。
代わりに、大事に大事にその箱を受け取った。
開けると中には、りんご型のクッキーがコロコロ。
一口食べると、なんともいえない幸せな気持ちが、口に心に広がった。

「おいしい。最高のプレゼントだね」
いつの間に大きくなった息子。
満足げにほほえむ息子。
君こそが、神様からの最高のプレゼント。

私はこの日を、きっと、ずっと、忘れない。