2006年6月

第3回
心の寄せ鍋


長い長い冬休みを終え、やっとこさ陽だまりサロンが動き出した。

真っ先にやるべきは、冬の間のんべんだらりと怠けきった精神に、「喝っ!」を入れること。つい先日まで食っちゃ寝、食っちゃ寝で、正月気分だったからね。

たるんだのは精神ばかりでなく、肉体にもキテいる。脱・脂肪のため、毎朝腹筋50回、エアロバイク20分、腰ひねり3分ノルマを実行中。夏までに、藤原紀香になるぞおお!(古い?)

さてそんな中、2センチ引き締まった私の元に(やったね)、また賑やかな声が戻ってきた。生後2週間のほやほやの赤ん坊を連れて、ベビー・スリングを買いに来てくれた新米ママ。 「1時間かけて歩いてきました」と、ベビーカーをとめ、お茶を一気飲みするママ。「私、ビーズづくりが好きなんです。講座を開かせていただけませんか?」と、売り込みに来るママ。

ここには毎日、新鮮な出会いがあふれている。

サロンを開かなければ、一生会わなかった人もいるだろう。そんな人が、ドアを開け、「初めてなんですけど。。。」と、おずおず入ってくる。一見普通に見えるママも、話をしていくうち、実はとんでもない経歴を持っていることに驚くこともしばしばである。

「東京でメイクの仕事をしていて、テレビでレッスンしてたのよ〜」

「外国生活が長くて通訳をしてたから、ついぽろっと英語が出るんです」

「カリグラフィーの資格があって、結婚式場から頼まれたりするの」

「・・・ほほ〜、素晴らしいですな」

本人にとってはなんでもないことでも、私にとっては宝の山。こんな何気ない会話から、新講座・カリスマ講師が誕生する。そうして花開き、お店を持つ人、自宅で教室を始る人、サークルを作りリーダーになる人。それぞれが輝きを増しながら自分の道を切り開いていく。

その姿が私の、そして他のママたちの刺激となり、肥やしとなり、「よし!私もいっちょ、がんばるぞ」なんて気にさせてくれるのだ。

ある、清々しい早朝のこと。

布団を干そうとデッキに出ると、眼下に散歩する人の姿が見えた。「ふふふ〜ん」と鼻歌交じりに重い布団をフェンスに掛ける。と、そのうち一人が足を止め、しゃがみ込んだ。

「どうしたんだろう?」

見るとその人は、ガードレールの下に咲いている草花を、大事そうに手折っている。私なら見逃してしまうであろうその花も、その人にとっては生活の大切な要素なのだろう。

ふとそれらの草花が、ここに集まる人たちの姿に重なった。ひとつひとつが清らかに、空に向かって背を伸ばす。誰から見られなくても、評価がなくても、今日やることを精一杯。種を蒔き、慈しみ、育むことを使命として。薔薇のように、百合のように、目立つことはないかもしれない。

けれど、可憐なその花たちは、みんなそれぞれ個性的で、花束にすると思わぬ光を紡ぎ出す。どんな豪華な花にも負けぬ、存在感を携えて。

「陽だまりサロンは、心の寄せ鍋だね」。そんなことを言った友人がいる。ぷぷ、うまいこと言うじゃん。その寄せ鍋のだし汁として、今日も私は歩を進めよう。