2007年6月

第15回
秋田の元気


「陽だまりサロン、2周年おめでとうございます」

「亜紀さん、お誕生日おめでとう」

6月8日。ひときわ賑やかになったサロンに、乾杯の声が響き渡った。

「ありがとねー。そうか、あれからもう2年が過ぎたのかぁ」なんて談笑している間にも、次から次へと連絡やら確認事項が入る。

「とりあえず、腹ごしらえはしとかなくっちゃ」

おにぎりと、お客様お手製の鶏の紅茶煮なんぞぱくつきながら、それらにうんうん頷く。お祝い気分もそこそこに、間もなく県知事とママ達との意見交換が始まるのだ。

つい1週間ほど前のこと、1本の電話が鳴った。県庁職員さんからだ。

「意見交換の開催場所を探しているんですが、やりませんか?」

「はい、いいですよ」

いつも通りの安請け合い。

「で、日程は?」

「6月8日です」

「おやま、その日は誕生祭です。忘れられない誕生日になります」

内心「おいおい、そんな簡単に請け負っていいのか」ともう一人の自分がささやく。でも「頼まれごとは試されごと、0.2秒でハイと言え」、そんな誰かの格言を結構忠実に守っている私。やってやれないことはない、やらなきゃ損損(何が?)やることに「決めた」。

何事も、決めてしまえば腹が据わる。後はそれに向けて段取りを組み、ひとつひとつこなしていくだけ。幸か不幸かそんな私の勢いにつられ、一緒に走り出す人も現れる。参加者をかき集めてくれる人、「こういった人を呼んでは?」と助言してくれる人。大人数対応メニューを教えてくれる人に、アニバーサリースウィーツを焼いてくれる人、そしてそれをまた1時間かけて届けてくれる人。そういった人達の働きに助けられ、いつもなんとか事が成っていくからありがたいことである。

「知事が到着いたしました。道路に出て出迎えてください」

「ふぁ〜い」頬張ったおにぎりを慌ててお茶で流し込み、何事もなかったような満面の笑顔でお出迎え。「私って女優」心の中であははと笑う。

さあ、車座になっての意見交換が始まった。「若いお母さん達って、自分の意見を言えるのかなあ」そんな心配は見事に打ち砕かれた。

「使えない子育てクーポン券にお金をかけずに、その分を奨学金に回したらどうですか」

「児童館などの、遊びを提案する立場にある人間が、現場に出てこずにずっと事務室で仕事をしているのはどういうわけなんですか」

「あなた達のように、育児をしてこなかった人間が考えた案と、実際子育てをしている私たちが望むことには温度差がある」

出るわ出るわ、「こりゃ、徹夜覚悟で望んだ方がよかったんじゃないの?」と思うほど。

面食らったのは私ばかりでない。県職さんはもちろんのこと、集まった報道陣も舌を巻いた様子。「いや〜、今回出た内容は知事にも相当効いたと思います」とは、知事に近い立場にある方の談。「ここに集まるお母さんは、みなさん活発なんですね。」とは、会の追っかけをしていた記者さんの談であった。

「秋田の人は元気がない」「秋田の街には、遊ぶところも活気もない」とはよく耳にする。他のところはよく知らないが、私の周囲に限って言えば、これは「?」である。なぜかサロンには、元気があり余っている人ばかり集まってくる。

楽しいことは自分で作り、「次、私これやります!」と宣言する。その人が、例えてみれば台風の目となって、多くの人を巻き込んでいく。そんなうねりが次々に空気感染し、場も人も、全てが活気ずいてくるのだ。

知事、ここに集まるお母さん達を見てください。小さな子どもを育てながらも、自らの力で動き、輝き、とっても生き生きしているでしょう。

ここに集う人ばかりじゃない。誰もが皆、何かしらの才能を持って、それぞれのポジションで根っこを張って立っています。それがあなたに見えていますか? 誰もが秘め持つ素晴らしさが、見えていますか?

ほしいのはお金じゃない。ほしいのはサービスじゃない。頑張っていることを『頑張ってるね』と認めてもらえ、困った時には手を差し伸べてくれる人がいる。そんな、精神的なつながりがほしいのです。『要は人』。

この輝きを消さぬよう、お互いができることを持ち寄って支え合う場があること。それぞれが持てる能力を発揮して、人と人とがつながる土壌を築くこと。縁あって秋田に住む人々の、力を引き出し、それを活かせるフィールドを整えること。それが、私の望む全てです。


これこそが、遅ればせながら私なりに出した答えである。さぁてこれから先、私たちの声がどこまで届くのかな。

「忘れられない誕生日」が来るたびに、「知事もなかなかやってくれるじゃんっ」と笑いながら話し合っていたいものだ。