2008年3月

第24回
開けないダイレクトメール


「こんなに笑ったのは、いつ以来かなあ」
「あれ?久しぶりに話したから、うまく口がまわらない」
そんな自分を笑い飛ばしながら、陽だまりサロンにはママ達の明るい声があふれる。

小さな赤ん坊を育てていると、外に出ることがぐぐっと少なくなる。
ほんの数ヶ月前まで、お腹の中に丸まっていた赤ん坊。
ふにゃふにゃに柔らかくって、ほかほかにあったかくって、ぷにぷにに愛おしい。

そんな「できたてほやほや」みたいな赤ん坊がいるとね、
「お外に連れ出すと、風邪ひいちゃうかな」
「人混みに行くのは、まだちょっと早いよね」って外出をセーブしちゃうんだ。
そんなこんなで、家で過ごすことが多くなり、結果、人と接する時間が少なくなる。

「あれ?今日宅急便の人としか話してないや」
「今日は、誰とも話してなかった」
そんな日が、封を開けないダイレクトメールみたいに、ぱさりぱさりとたまってく。
1通1通は薄くてもそれは、束になると結構な厚さ。
その厚みが増すほどに、「えいっ」と人の中に出ていけなくなるんだな。

私自身がそうだった。
おむつの二人とお出かけするのが大変で、ひたすら家で過ごしていた。
たまに誘われて行く育児サークルでは、自己紹介にも心臓ばっくん。
「誰か大人と話したい」
いつもそう思ってるくせして、話しかけられても会話がうまく続かない。

誘ってくれた友人は、誰とでも平気で話しているように見えて。
それがやたらとまぶしくて。そして、とっても羨ましくて。
人と話せなくなった自分が、なんだか惨めで情けなかった。

それから。
まずは友人をまねた。

「あ、彼女は笑顔がいいんだな」
「それに話しているように見えて、それ以上に人の話もちゃーんと聞いている」
そうやって気付かされたひとつひとつを、自分も心がけるようにした。

話し方の本をあれこれ読んで、ぴっときたものはノートに写した。
講演を聴きに出かけ、何が心に響くのか、どう伝えたら入ってくるのか体験した。
結婚式では司会者に「どんな勉強をすれば、話せるようになりますか?」と尋ねた。
アナウンサーやキャスターさんからは、あがり克服法や相手を思いやることを教えていただいた。
メルマガで話し方のコツを、DVDで発声を、落語講座で「間」の取り方を学んだ。

「心臓ばっくん」から早9年。
失敗もあったけれど、前より自然に、そして心地よく人と時間を共有できるようになった。

人の視線におびえなくてすむと、息を吸うのが楽になる。
人の輪にするりと入っていけるようになる。
そして何より。
生きるのが楽しくなるんだよ。

「話し方が変わると、人生が変わる」。
大げさかもしれないけれど、私はそう信じている。

だから。

好かれる話し方を伝えることで、心軽く、楽しく生きるお手伝いをしたい。
私と同じく、自信をなくしている人の背中を「大丈夫だよ」って押してあげたい。

それが私の、次の目標。

もうすぐ春。
GW明けには、陽だまりサロンも再開する。
勇気を振り絞って、初めてドアを開ける人もいるだろう。
そんな誰かさんを、満開の笑顔でお迎えすることから始めよう。
「こんにちは、来てくれてありがとう。お会いできて嬉しいです」と。

さ、そのために今日も、鏡に向かって「あ・え・い・う・え・お・あ・お」。
あなたの笑顔を思い浮かべながら。