2008年6月

第27回
一本の軸となれ


梅雨の季節といわれる、6月。
真っ青でまっさらな空には、雨の気配などまるでない。
庭に植えた白樺がさらさらと葉を揺らす。
そのすき間から、天の光が身体全体に降り注ぐ。

朝の陽光を受け止めて。
ふわり。ひとつ歳を重ねた。 

自分が親となって迎える誕生日。
出産、子育てを経たそれは、子どもの頃とはどこか違って。
「産んでくれてありがとう」「育ててくれてありがとう」。
口に出しては言えないけれど、そんな満たされた気持ちでいっぱいになる。

母もこうして小さな私を、眠りにつくまで揺らしてくれたのだろう。
父もこうしてことある毎に、一瞬一瞬カメラに収めてくれたのだろう。

幼稚園からの帰り道、友だちの家に寄り道したことがあった。

「ばいばい」外に出ると、細い月が浮かんでいた。向こうから近づいてくる人影。私を探す母だった。

「心配したんだよ。幼稚園に電話して、ずっと探していたんだよ」

私を映した瞳が潤んでいた。

入院した時のこと。ふと父に会いたくなり、看護婦さんをせかして電話してもらった。

「何かあったか!」青くなって駆けつけた父。
「パパに会いたくなって」とはしゃぐ私を見て、ほっとした顔してぺたんと床に座り込んだ。

幼い頃の記憶はいつだっておぼろげで、頼りない。
けれど私は確かに愛されていた。
どんなときも。どんなときも。
そんな想いが頭のてっぺんからかかとまで、すーっと一本貫いているんだ。
それが私の軸となり、だからこうして安心して立っていられるのかもしれない。

ありがとう母さん。
ありがとう父さん。
愛してくれてありがとう。
生命を与えてくれてありがとう。

ふと、横にいる娘がつぶやいた。
「ねえお母さん、誕生日には神様からもプレゼントがあるんだよ。
『歳』っていうプレゼント」

そっか。
そうだね、「歳」は神様からのプレゼント。
小さな肩を抱き寄せて、青々と茂った葉を見上げる。
またひとつ歳をいただいたことに感謝して、この命を精一杯。
両親に、家族に、そして周りのたくさんの人に、受け取った愛を渡していこう。

暑い日には木陰となって、乾いた人には水を差し出し、時には誰かの支えとなって。
愛を忘れず、成長を続け。
発した言葉の一葉でさえも人を温められるような。
そんな人になっていこう。

そう、空に向かって枝を広げる、この白樺の樹のように。