2008年9月

第30回
はじめの一歩


よく晴れた1日、真っ直ぐな道路を風を切って走る。信号が変わり、踏切を渡ると、きらきらまぶしい海が見えてくる。

「キキー」

車を停めて建物へと急ぐ。と、子ども達のはしゃぐ声。ふわっと心が上気して、それに導かれるように階段を駆け上がる。

「お疲れ様。今日もお客さん、たくさん来てるね」

着いたところは、その名も「四葉市場」。月に1,2度場所を借り、市場のようにそれぞれ「何か」を持ち寄って集う。それは「もの」だったり、「才能」だったり、「労力」だったり。

物作りが好きな人は作品を並べ、特技がある人は講座をひらき、食に詳しい人がランチを担当する。妊婦さんは売り子をし、足の痛い人は受付に座り、手の空いた人が皿を洗う。そんな賑々しさに惹きつけられて、今ではたくさんの親子連れが訪れる。

始まりは、小さな一歩だった。

陽だまりサロンで出会った数人が「自分でも何かがしたい」と動き始めたのは、まだ去年のこと。たまたま借りられた住宅展示場で、和みアート、エステ、リラクゼイションのみっつの体験会を行った。 

どれもこれも母親ならば「子どもが小さいから」とあきらめてしまいがちなものばかり。けれどそこはお互い様。来る方もお母さんならば、迎える方もお母さん。

子ども達を見合いながら、スタッフは働き、お客様は体験をして。お昼には持ち寄ったおかずを並べ、ちょっとしたホームパーティーといった雰囲気。

自分たちの手で創り上げた催しは無事終了。スタッフの顔は「自分にもやれたっ!」という達成感であふれていた。

これを一度味わったら、人はなかなかやめられない。その後も、体験の数を増やしたり、手作り品の販売を加えたり、場所を変えたりと新しいチャレンジが繰り返された。

今では人気の定番講座もでき、野菜屋さんやパン屋さんが販売に駆けつける。

陽だまりでは出せなかったランチも提供し、子育て中のママにとっては貴重な「外食」できる場ともなっている。 

「陽だまりサロン」から生まれ、陽だまりを越えていく。伸びやかに、そして軽やかに。

そこにいるのは「○○さんの奥さん」ではなく「△△ちゃんのママ」でもない。名前で呼ばれ、必要とされ、社会の一員として働く喜びをかみしめる一人ひとりの女性。

それぞれが皆自分色を放ち、水を得た魚のようにいきいきと動き回る。それは、見ていて清々しいほどに。

小さな一歩でいい。ずっと残る、深い一歩にしよう。すべてはそこからスタートする。

少しの勇気とたくさんのわくわくで開いた「四葉市場」。あなたもほら、幸せ見つけに行きませんか。