2008年11月

第32回
ものは考えよう


「ものは考えよう」という。それを地で行く体験をした。

どんよりした朝。薄暗い西の空としばしにらめっこ。夕べは頭が重く、風呂にも入らず寝てしまったしなあ。

やめる理由はいくらでもある。でも。「いいや、行っちゃえ」。スニーカーの紐を結んで、威勢よく玄関の戸を開け外に飛び出した。

毎朝やってくる「歩きたい衝動」は、曇り空も少しくらいの体調不良も止めることはできない。さあ、大好きなウオーキングの始まり始まり。

今の季節、もみじやいちょうの葉が鮮やかに色づいている。春には桜の花を見上げ、夏にはむせかえすうような薔薇の香りに包まれる。

たったひとり歩く、この時間が好きなんだ。

と、ぽつりぽつり雨が落ちてきた。もう予定の3分の1は来ている。

「進もう」

そう決めて歩く間にも、稲光が走り、とうとう土砂降りの大雨になった。カメラのフラッシュのような稲妻が光り、雷の音が間近にとどろく。雨はアスファルトに跳ね返り、煙って白く見えるほど。すれ違う車のワイパーは、右へ左へせわしなく動いている。

顔や髪からぽたぽたと滴がしたたり落ちる。雨に濡れたジーンズがももに張り付く。歩くたび、靴下がびちゃびちゃ音を立てる。

外からは、かなり悲惨な状況に見えるだろう。ワイパーの隙間から見える運転手さんは「かわいそうに」といった表情だ。しかし。私はそんなことおかまいなし。

「いや〜、やっぱり健康第一だわ。歩けるって嬉しいな」

「あ、これコラムに書こっ。歩くとアイディアがぽろぽろ出てくるってほんとだな」

「そうだ。濡れたついでに帰ったらシャワー入ろう。昨日入れなかったから調度いいや」

にこにこしてそんなことばかり考えていた。

ものの捉え方なんて考え方次第。どんな状況だって、考えひとつでどうにでもなる。

「ただいまー」

濡れた衣服を洗濯機に突っ込みシャワーを浴びる。すると浴室の窓からパーッと光が差し込んだ。

「なぬ?雨止んだのか。どうせなら歩いてる時に止めばよか・・・」。

まで来て「いかん・いかん」と思考を中断。せっかくいい方にとれたんだから、これからもそうありたいと思ったのだ。

そんな時は「よかった!」と口に出して言ってしまうといいそうだ。「よかった!」と言ってから理由を後付けするのだ、と。「よかった!・・・う〜ん、う〜ん・・・そうだ!陽だまりに来るお客様が濡れなくてすむからよかった!!」

すっきりと髪を乾かし、さあ、サロン開店。

「おはよう、雨が上がってよかったね!」

雨上がりのしずくがきらきら輝く、清々しい朝だった。