2009年4月

第37回
やさしさバトン


時々ふと思い出す言葉がある。

「やさしさのバトンをまわす」

これは私が陽だまりサロンの活動を思い立った頃、頭の中によぎった言葉だ。

やさしさのバトンをまわす─── 私が受けたやさしさを、「本人に返す」のではなく「ほかの誰かにまわす」。その「誰か」もまた、次の誰か渡していく。受け取った2人がまたほかの2人に渡せば、やさしさがねずみ算式に増えていく。そんなイメージ。

私はこれまで、たくさんの人に助けられてきた。だから今度は私が、誰かの力になりたいと思った。そしてその人が満たされたら、あふれ出た分で人にやさしくできるだろう。次にまわしていけるだろう。そしたらその場が、世の中が幸せになるんじゃないかな。そう思ったんだ。

昔見た絵本で、今でもぼんやり記憶に残るものがある。題名は忘れてしまったけれど、確か森の池のまわりに住む動物たちの物語。

大きな鮭をとった熊さんが、食べきれなくてお隣のたぬきさんにお裾分けする。たぬきさんは隣のきつねさんに。きつねさんはうさぎさんに。それがぐるり回って最後には、また熊さんに返ってくる。

「鮭は小さくなるけれど、やさしさが森いっぱいにあふれていく!」

子供心に、そんな発見をし嬉しくなった。

いただきものがあったらお裾分けする。
細かなお釣りが出たら、レジ脇のボックスに寄付する。
靴や洋服が小さくなったら、「お下がりいりませんか」と声をかける。

それは何も、目に見えないものでもかまわない。例えば銀行に行った時。先に入った人が、ドアを開けて待っていてくれることがある。そんな思いやりに触れると、「次は私も」と心がほっこりする。

自分にできるささやかなこと。
けれど受け取った人にとってはありがたいこと。
そんな何かを次の誰かへ。

あたたかい言葉をかけるのでもいい。
柔らかな笑顔をなげかけるのでもいい。
出会った人を誰かに紹介するのでもいい。

「自分発」やさしさバトンをまわしていこう。