2009年8月

第41回
夏休みっていいな


青い空に白い雲。ジンジンとセミの声が響く、夏。

そして私の「宿題やれい!」の声も大いに響く、夏!

「ああ、夏休みっていいな。ずっと続いてくれたらいいのに」

「へ?」

子どもが言うならわかる。もしくは、学校の先生が言うのでもうなずける。

けれど私にとってそれは「へ?」であった。
なぜって、それが私と同じ立場の「お母さん」のセリフだったから。

「お昼ご飯作るのとか大変じゃない?それに家の中だって散らかり放題だし」

「え〜?そんなことより、子どもを急かさなくっていいから楽なの。時間に追われない分、のんびりできるでしょ」

「『宿題は?』『後で〜』の繰り返しで疲れるんだけど、私」

「私は先に子どもと取り決めしたの。夕方一回だけ、『宿題は?』って確認する、って。『後はなんにも言わないからね』って。それですんでるよ」

「ほお〜」

「あとは子どもと一緒にいろんなことして楽しんでるよ」

「ほほお〜」

満面の笑みを浮かべ、頬をちょっと紅潮させて語る彼女。その顔には「思う存分楽しんでます!」と書かれている。きっと彼女は、私と違うメガネをかけているのだ。「長(なが)休み大好き」「子どもと一緒に楽しもう」というメガネを。

ならばラッキー!

だってメガネは変えられる。私もそれに変えればいいんだ。

試しに「宿題は?」を「宿題、何時に始める?」に変えてみた。

そしたら「8時に始める」と答え、時間が来ると「ぁ、8時だ」とやり出した。

またまた「へ?」である。今まで1日中、口から泡を飛ばしていたのはなんだったのだろう。

ホースで水まきをすると、走り寄ってくる子ども達。

「濡れるからあっち行ってて」と言うのを「楽しむ、楽しむ」と唱えぐっとこらえる。

「わーい、水のトンネルだぁ!」

「虹になってるよ」

頭までびしょぬれになって、子犬みたいにじゃれ合うふたり。ポップコーンみたいにはじける声。

「お母さんにもやらせて」

あんまり気持ちよさそうだから、楽しそうだから、私もトンネルをくぐりたくなった。頬に降ってくる水しぶきが、きらきら光るしずくが、子ども達の笑顔を一層輝かせる。

「お母さんが一番びしょぬれだぁ」

「そういえば、お母さんも水が大好きだったんだ」

あははと笑い合うその声に、なんだか久しぶりに心がひとつになった気がした。

かけるメガネは変えられる。

かけるメガネは自分で選べる。

「子どもと一緒に楽しむ」メガネに変えて、残りの夏、子どもの目に「笑顔のお母さん」を焼き付けよう。