2011年4月

第62回
発信源に、なろう


ひたむきに走る選手に、心打たれたことはありませんか。
魂込めて歌う人を、まばたきもせず見入ったことはありませんか。
私たちは、そんな誰かの姿に、元気や勇気をもらうことがあります。
勝手に力をもらって、エネルギーを充電することがあります。

GW最後の日でした。
「おすしやさん、行きたい!」
子ども達のたっての希望で、回転寿司に行きました。
ちょうど夕飯時だったこともあり、店内は満員御礼。
「1時間はかかるかもね」
「しょうがない、待つとするか」

その間。
私の目はひとりの店員さんを追っていました。
なぜでしょう。
その店員さんの周りだけ楽しげなのです。
その人が言葉を交わすお客様が、皆笑顔になっていく。
その人が通る通路でさえ、明るい空気に変わっていく。
その店員さんが中心となって、周りへ周りへと顔がほころんでいくのです。
それはまるでぽっぽっと、枝から枝へ桜が開いていくように。

それを見ていたら、あっという間の1時間。
「4人でお待ちの若松様〜」
「はーい!」と席へと着きました。

「アジください、わさびぬきで」
「へい!アジのさびぬき一丁」
「チーシキン・・・じゃなかった。シーチキンまきください」
「へい!シーチキン一丁」

食べ盛りの息子。皿がどんどん積み重なっていきます。
そこへ、先ほどの店員さんがアラ汁を持ってきてくれました。
ふわ〜んと、アラのいい香り。

するとその店員さん、息子の小高くなった皿を見て言いました。
「あっら〜!あなた、いっぱい食べるねぇ」
そうしてだんなに向き直り、こぶしを握ってガッツポーズ。
「お父さん、今から負けてちゃいけないよっ。ファイトー!!」
そう、かけ声残して去って行きました。

「あっはっはっ」
その様子に、私たち家族は大笑い。
見ると後ろの席にいたご家族も、それから寿司職人の男性も笑顔になっています。
「ああ、だからみんな楽しそうだったんだ」
左手には受け取ったアラ汁。
右手はつられてファイトのポーズをとり、私はひとり納得したのでした。

人は人から勝手に元気をもらいます。
そしてその元気は周囲へと伝染していきます。
スポーツ選手や、歌う人や、寿司屋の店員さんや、いろんな人が発振源となって。

そしてあなたも発振源になれる人です。
あなたの笑う顔を見て
あなたが話すことばを聞いて
あなたが子どもを愛おしく抱く姿を見て
勝手にエネルギーを充電する人がいます。

遠くを目指さなくていい。
「何もできない」と自分を責めなくていい。
あなたは「子育て」という尊い仕事をすでにしているのだから。
あなたはあなたのフィールドで、あなたができることをすればいい。

発振源に、なろう。
この場所で。
あなたはそれができる人だから。