2011年5月

第63回
幸せのカタチ


いつものんびりしてるくせに、時々「のんびりしよっ」と温泉に出かける。
「ほわあああ」
あったかい大きな湯船につかると、わけもなく声が出る。
そうしていくぶん暖まると、いつもきまって露天風呂へと足を運ぶ。
その日の私もそうだった。

「よいしょ」
重いガラス戸を開けると、露天風呂には先客が2組。
右端には40代後半くらい、お母さん仲間らしき2人。
左端には母娘と思われる2人。
私はその真ん中に、ちゃぷ〜んと身を沈めた。

右のお母さん達は、子どもの受験話しに花が咲いている。
「もうすぐ部活も終わりでしょ」
「そうそう。だから『そろそろ志望高考えなくっちゃね』って言ったのよ」
「そしたら?」
「『知ってるし!』だって。」
「腹立つよね。こっちは心配してやってるのに」

ふと左を見ると、母親と見られる女性が、娘さんの顔をぬぐってやっている。
お湯で手をぬらしては頬をぬぐい、また手を浸してはおでこをぬぐい。
娘さんはなにがしかの障がいを持っている様子。

母親の体格をゆうに越える背丈で、顔だけが幼さをとどめる。
その顔を何度も何度もなでる母親の、ゆったりした手。
それを娘さんは何とも言えない表情で、すっかり体を心をゆだねて受け入れている。

右では塾の授業料に話しが及ぶ。
左ではことばもなく、ただ静かに2人の時が流れる。
私はその真ん中で青空を見上げる。

ねえ、神様。
幸せってなんでしょう。
豊かさってなんでしょう。
当たり前ってなんでしょう。

いろんな形の幸せがあって
いろんな温度の豊かさがあって
いろんな色の当たり前があるし、あっていい。

きっとそれは人それぞれで。
ひとりひとりが選ぶもの。
自分の心が決めること。

そしてその積み重ねが今を作っているのなら
「明日」は自分でデザインできる。
「未来」はあなたが決められる。

あなたの幸せはなんですか。
「今ある」幸せは、なんですか。