2011年6月

第64回
いいとこメガネ


ミーン、ミーン、ミーン。
青い空にセミの声。
もうすぐ夏休みがやってくる。

「おかあさん、あさって学校にお弁当持っていくの」
「へえ〜、中学校ってお弁当の日もあるんだ」
「うん。ちくわの中にきゅうりとチーズ入れて」
「いいよ」
「それから唐揚げと、トマトに卵焼きも!」
「はいはい」

頭の中にメモ書きして、スーパーへ。
娘に頼まれたあれこれを買い込み、その日の朝はちょっと早起き。
「喜ぶだろうな」
「彩りもオッケー」
「よし、できた!」
そこへちょうど起きてきた娘。
「ほら、お弁当できたよ」
どんな顔をするだろう。「おいしそう」って言ってくれるかな。
そんな期待を胸に、娘の第一声を待った。

するとうちの娘、どう言ったと思います?
差し出したお弁当をじーっと見ること数秒間。
無表情で、ぼそっと低い声で「・・・チーズ入ってない」、ですと!?
母、がっくし。

私がチーズを忘れたのは明らかです。
今朝食べた朝ご飯のおかずだって思い出せないくらい、物覚えは悪いです。
ですが、それ以外はちゃ〜んとやりました。
ちくわにきゅうりを入れる労力とか(←たいしたことないけど)、ミニトマトに旗を刺したアイディアとかさ〜(←ファミレスのまねだけど)。
娘よ、そのあたり、もう少し認めてくれてもいいんじゃないの?

あなたがうちの娘ならどうですか。
いいところを見ますか。
気になるところを見ますか。

お弁当だけではありません。
空き缶がひとつ落ちている、だだっ広い緑の公園に行ったなら。
掛け違えてはいるけれど、子どもが黙々とボタンをかけていたなら。
家の中がとっ散らかっている。それでもだんなさんが子守をしてくれたなら。

そしてあなたは、いいところと気になるところ、どちらを見てもらったら気持ちがいいでしょう。
カレーがおいしくできた日に「おいしいね」と言ってもらえるのと
焦がしてしまった日に「こげてるよ」と指摘されるの、どちらがやる気が出るでしょう。
私はいいところが見える「いいとこメガネ」をかけて過ごしていきたい。
そしたら、これから始まる夏休みも気持ちよくいられる気がするから。

おっとその前に。
私も「チーズ入ってない」に「おっ!よく気付いたね」と返せるよう、「いいとこメガネ」の修行をしなくっちゃ!