2011年8月

第66回
ちっちゃい命がくれたもの


あなたのお宅では、生き物を飼っていますか?
子どもがお祭りですくってきた金魚。
林でつかまえたカブトムシ。
スルメで釣ったザリガニたち。
我が家にもいろんな生き物が、入れ替わり立ち替わりやってきます。

おととしのクリスマスのこと。
「サンタさん」がテーブルの上に置いた箱をそーっと開けてみると・・・。
「きっ」と言ったような言わないような。
中から小さな小さなハムスターが顔をのぞかせました。

「うっわ、ハムスターだよ!」(だんなが同僚からもらったよう)
「名前はなんにする?」
「1匹は『さくら』だから(そう、すでに1匹いたんです)こっちは〜」
「さくらんぼ!」「長くない?」
「きらら!」「う〜ん」
「おくら!」「ない、ない」
「ショコラ!」「よし、きまり!!」
こうして「ショコラ」が我が家の仲間入りをしました。

ひまわりの種を、ほお袋いっぱいに詰め込むショコラ。
回し車を、一晩中ガラガラと回し続けるショコラ。
ケージから出すと食器棚の後ろに隠れて、なかなかつかまらないショコラ。
さくらとは気が合わず「別居」となりましたが、子ども達にはよくなつき遊び友だちになりました。

そして「その日」は、思いのほか早くやってきました。
その日私は、子どもより遅く帰ることになっていました。
遠くで仕事があったためです。
「きっと6時には戻れるから」
そう朝に伝えたものの、山王あたりで渋滞。
あせって電話を入れました。
「約束の時間より遅れそう!」
「お母さん・・・」
電話に出た娘のさびしそうな声。
「ごめん!なるべく早く帰る!」
「お母さん・・・ショコラが・・・ショコラが死んじゃった」
「え・・・?」そのままことばを失い「待ってて、今行くから」と電話を切りました。

帰りの時間が遅くなった申し訳なさと、渋滞で進まないもどかしさ。
家で待っている子どもと、元気だったはずのショコラ。
いろんなものが交錯しながら、ようやく家のドアを開けました。
と。
いつもならまだ外で鬼ごっこしているはずの息子が、明かりもつけずに座っています。
その手の中には、動かなくなったショコラ。
ずっと泣いていたのでしょう、目が真っ赤です。
「いつからそうしていたの?」
「学校から帰ってから」
じっとしているのが大の苦手な息子なのに、もう二時間近くもそうしていたなんて。

娘は何やら手を動かしています。
「ショコラを入れる箱を作ってるの」
見ると、小さな白い箱には、これまた小さな折り鶴がたくさん入っています。
「鶴、入れるの?」 
「うん、ショコラが天国に飛んでいけるように」
「お花も入れたのね」
「うん、ショコラが喜ぶように」

ちっちゃい命がくれたもの。
お別れのさびしさ
生命のはかなさと重さ
命には限りがあるという現実

共にいられた喜び
ことこと動いた鼓動
生きるものの温かさと柔らかさ

そーっと、そーっとその中にショコラを眠らせ、息子がショコラに手紙を書きます。
ぽとぽとと涙を落として書き上げたそれには、こうしたためられていました。 

「いままでありがとう。
てんごくでもいっぱいあそんでね。
またうまれてくるときは、いっしょになれるといいな」