2012年6月

第75回
ほめ言葉のシャワー


水野スウさん。
彼女を知ったのは、ある新聞記事がきっかけだった。
自宅を開放して、訪ねてきた人の話を聞く。
そんな活動を、もう30年近く続けているという。
その集まりの中で時々「ほめ言葉のシャワー」という遊びをしているのだとか。
それをまとめた冊子が全国で反響を呼んでいる、記事はそれを紹介するものだった。

あれから4年。
まさかご本人から、生「シャワー」をしていただくことになろうとは。
彼女に魅了され石川のご自宅まで訪ねたMさんが、秋田に仕事で来る彼女をつかまえ「お話を聞く会」を企画したのだ。
当日は聞きつけたファンが、青森からも、岩手からも訪れた。

歌うようにスウさんの声が流れ、いよいよ「ほめ言葉のシャワー」である。
「言われて嬉しかった言葉を書いてください。
そして、いったん集めて混ぜます。
引いたメッセージを順番に読み上げていきましょう」

「言われて嬉しかった言葉」???。
そんなの、あんまり考えたことないな。
相手を喜ばせる言葉ばっかり、いつもいつも頭を巡らせて。
自分のことをゆっくり振り返るなんて、そういえば忘れてた。
ふと見ると、紙に向かうみんなも真剣そのもの。
きっと誰の頭の中にも、さまざまな思いがよぎっているのだろう。

そして、一人ひとりが受け取ったメッセージを読み上げる時が来た。
ぽつり、ぽつりと静かに、でも炊き立てのごはんみたいに、ほっかほかの声で。
「話してよかった」
「がんばってるね」
「会いたくなった」
「もう、休めよ!」
「いてくれるだけでいい」
「友達だから、一緒にいるんだよ」
「生まれ変わっても、またここに生まれたい」
ああ人は皆、心に残ることばを持っている。
人知れず、あたため続けているひとことがある。
そのことばに救われ、心の灯りを取り戻し、元気出して、ここまで生きてきたんだな。
「ほめ言葉のシャワーは、頭で理解するんじゃなくて、体で感じてみる。それが大切」
あの冊子に書かれていたことが、わかった気がした。

トトロのおなかで眠っちゃったメイちゃんみたいに、いつまでもいつまでもまどろんでいたい。
そんなひと時だった。

あなたが嬉しかった言葉はなんですか?