2013年8月

第89回
球児に学ぶ驕らぬ心


あなたは運動部でしたか。それとも文化部? もしくは帰宅部?
私は中・吹奏楽、高・帰宅部、大・弓道と、はちゃめちゃです。共通点はどれも、運動神経をさほど問われない、ということでしょうか。
こんな私ですがスポーツ観戦は好きです。
特に野球、それもプロではなくて子どもたちのそれです。

先日、「角館高校、初の甲子園出場なるか」にいてもたってもいられず、こまち球場へ車を走らせました。
知事が「自分の目が黒いうちに」とのコメントを出すほど、「母校を甲子園に行かせてやりたい」という我々卒業生の願いは強烈なものでした。

甲子園常連校を相手に、打ち、走り、点数を重ねる角高球児。
「もしかしたら、いけちゃう?」。そんな期待が応援の声を大きくします。
その後、同点のまま延長戦へともつれこみました。
何度も好機がありました。
1アウトでの、走者出塁。
「ここで一発」に応えての、美しい飛球。
ですが相手はさすがに強く、なかなかそれ以上の点を許してくれません。

そして迎えた15回裏、守り。走者は3塁です。
カーン・・・相手にヒットが出ました。
「ああ、握り返した」
私の後ろの席でつぶやくそれが、何を意味するのか分からなかったけれど。
遠くキャッチャーに向けて球を放つ外野手と、ホームへ突っ込むランナー。
さあ、天はどちらに味方するのか。
「・・・セーフ!」
ついに。
ついに、点数が入りました。相手チームに、です。

角高敗退。青い空を見上げる球児。時の止まった応援席。
甲子園の切符を握ったのは、相手チームでした。
どんなにか嬉しいことだろう―――。
そう思い、空っぽになった心のまんま、グランドに集まる選手に目を落としました。

ですが、喜んでいるように見えないのです。
抱き合いもせず、雄叫びを上げることもせず、すっと一列に並んだのです。
「あれ?」。
それはフシギな光景でした。違和感すら覚えました。
「いつも勝ってると、こんなものなのかな」
「甲子園行きは何度も経験している学校だから、そんなに感動しないのかな」
そんな思いがよぎりました。
「だったら、角高に勝たせてくれてもいいじゃんよー!!」
だだっこみたいな気分でした。

翌日の新聞記事で、ことの真相を知りました。
「勝利が決まり、選手が本塁付近に駆け寄ってくると、最初は笑顔を見せた主将は、喜び合う選手を手で制し、早く整列するよう促した。大会史に残る激戦を演じた角館ナインに敬意を表した」とあったのです。

ああ、そうだったんだ。
あの静けさは、なんて思いやりに満ち、優しさにあふれた行為だったんだろう。
自分たちだけの歓喜に酔うことのない、なんて大きな視野を持ったキャプテンなんだろう。
それに比べて私の、なんとちっぽけなことか。
「私も完敗! やっぱり、人の上に立つ人は違うな」
ぽつりつぶやき、一瞬でこの主将の、この高校のファンになりました。

秋田商業高校・野球部の皆さん、秋田のみんなが応援団です。
ファイト!!