2014年8月

第101回
トツゼンの再会


「若松さん…では、ありませんか?」
映画上映前の薄暗い館内で、ふいに声をかけられました。
ほほえんでいる顔を思い出せないのは、きっと暗さのせいだけではありません。
「ええっと~」。乏しい記憶力を駆使してみても、ほんとうにわからないのです。
傍らには3歳くらいの男の子が、黒目をくりくりさせながらのぞき込んでいます。

すると、その方が言いました。
「震災の時、おむつをいただいた者です」
「…あっ、あの時の!」
そうそうあの日、私はALVEで講座を担当する予定でした。
それが中止になったようで、けれど知らずに、1時間歩いて向かったのでした。

着くと、たくさんの方が避難していました。中には小さな子ども連れの方の姿も。
母子二人の方もいて、敷いた段ボールに赤ん坊を寝かせていたりします。
聞くと「夫が単身赴任で、家にいるのが怖くて」とのこと。
それでなくとも母親は、小さな命を守るのに必死です。

ましてやこの揺れと、停電。
「ミルクを作るお湯はどうしよう」「オムツの残りはどのくらい?」。
どれほどか心配なことでしょう。
毛布を配るのを手伝って帰る途中、スーパーに行列ができているのに遭遇。
「今なら、おむつがあるかも!」
最後尾に並び、なんとか数個入手。すぐに引き返し、サイズが合いそうな赤ちゃんのいるご家族に渡したのでした。

そのお一人が、目の前でほほえんでいたのです。
「あの時の子どもです。3歳になりました」
「そうですか。そうですか」
突然の出来事と、嬉しさと、映画開始。
頭が混乱し、胸がいっぱいで、それしか言葉になりません。
しどろもどろで大したことを言えないまま、映画が始まってしまいました。

その方は陽だまりサロンを知っていて、「9月に遊びに行きます」と言ってくれました。
今度会ったらいっぱいいっぱい話したい。
「元気でしたか?」
「あれからどうしていましたか?」
「お母さん、立派に育てていますね」と―――。