2014年10月

第103回
この子のたった一人のおかあさん


秋。

ほんのり赤く、または黄色くなりかけた木々の間を抜け、私たち夫婦は鹿角に向かった。
片道3時間半。それを往復、2日間。

何をしに行ったかと言うと、息子の陸上応援のため。
800メートル中距離のタイムは、2分とちょっと。
その数分のために、14時間車を走らせたことになる。

木漏れ日踊る車中で、ふと思い出した。
子どもたちの文章をまとめた「かみさまへのてがみ」という本。
そこに、こんな感じの一節があった。

「かみさま、
 ひとりのこどもにひとりずつ、
 おとうさんと
 おかあさんがいるのは
 いいしくみですね」

あはは、これって上から目線じゃないですか~と思いつつ、なんだか心に残っている。そうして子どものことで一生懸命な時、ふと思い出すんだ。

陸上の応援に向かう時、
慌てて参観日に出かける時、
なかなか終わらない宿題につきあう時、

お腹が痛くて休んだ日、
痛くないのに休みたいと言った日、
弁当にあれ入れないで、これにして、とハードルを高めてくる日。

喜んだり、心配したり、「やったね!」ってハイタッチしたり。
暗くなっても帰らなくて、外と時計を交互に見つめてそわそわしたり。
熱で寝込んて食べなくなると、死んじゃったらどうしようと涙があふれたり。

こうして、ひとつひとつにつき合うのは、この子の親だからなんだよなあ。
よその子だったら、ここまで親身になれないかもなぁ、と。

腹が立つことも嫌気がさすこともあるけれど、なんとか投げずにやっている。
それは、この子が自分の子だから。
私がこの子の、たった一人の「おかあさん」だから。

あふれる。あふれる。
そんなおとうさん・おかあさんが、教室にも、体育館にも、グラウンドにも。
手をかけ、目をかけ、心をかけて育てたわが子の、一瞬の勇姿を刻むため。

だから神様。
やっぱりこれは、いい仕組みです。
ひとりひとりが愛をたっぷり受け取るための、最高にいい仕組みです。

この子の親にしてくれてありがとう。

そうして私にもひとりずつ、おとうさんとおかあさんを、ありがとう。