2015年6月

第111回
手をあげよう



5月の末「東北六魂祭」がありました。
あなたは足を運びましたか?

見どころはなんといっても、6県の祭りが連なるパレードです。
ねぶた、竿灯、花笠、七夕、わらじ祭りにすずめ踊り。
見たことがあるのは、ねぶたと竿灯だけ。
ねぶたは大学の時に友人と出かけました。
「はねと」の着付けをしてもらい、一緒にはねた思い出があります。

竿灯のほかは、それしか知らない私。
祭りに向かう車の中、娘にあらん限りの知識を披露します。
「お母さんは、ねぶたで一緒にはねたことがあるんだよ。
楽しくて、祭りの期間中テント張って泊まってる人もいたよ」
「…ふ~ん」
「はねとがつけてる鈴が落ちることがあるのね。
それを持ってると幸せになれるんだって。
お母さんは拾えなかったけど」
「…へえ~」
興味があるやらないのやら、自慢話に炭酸が抜けたコーラみたいな返事をする娘。

さあ、着きました。
華やかな花笠や、楽しげなすずめ踊りに続き、来ました来ました!
ラッセラー ラッセラー ラッセラッセラッセラーの掛け声とともに、はねとの大群が。
一気にボルテージが上がります。
汗を飛ばし、頬を赤く染めて跳躍する人の群れ、群れ、群れ。
かけ声をかけ手拍子をする笑顔の観衆。
誘われて一緒に跳ねる竿灯会の男衆。
ああ、この躍動感を感じたかったんだな、自分の目で耳でお肌全部で。

その時です。
ちり~ん。
はねとの鈴が転がりました。

「あ…」
瞬間頭をよぎりました。
―――はねとがつけてる鈴が落ちることがあるのね。
それを持ってると幸せになれるんだって―――

数人が気づきました。
ですが観客はそちらに行けません。
その時です。別なはねとさんがひょいっと拾い上げ、観客を見渡したのは!
「はい!」
思わず手を上げるとその方は、にっこりうなずき放りました。

ぽ――――――ん。
鈴が弧を描きます。
みんなが手を伸ばします。
1,2、何秒かかったでしょう、それはまるでスローモーションのよう。
映画のワンシーンみたいに、ゆっくりとゆっくりと宙を舞います。
・・・パシ!
誰かがキャッチしました、しかも片手で。お見事!

その手の持ち主をたどってみると、なんとびっくり、娘ではありませんか。
いつもはどんくさいのに、こういう時はすばやいのね(失礼!)。
二マ~。その目といったら、新月並みの細さです。

ちりん、ちりん。
猫みたいに鈴を鳴らして帰り道、冒険家・阿部雅龍さんが言ったことを思い出しました。
「ほしいものややりたいことがあったら、手を上げるといいよ。
すると、助けてくれる人や教えてくれる人が表れるから。
ぼくはそうやって夢をかなえて来た」。

な~んだ、雅龍さんが言っていたことはこれだったんだ。
ほしいなら、手を上げればいい。
来たら迷わずつかめばいい、たったそれだけ。
夢をかなえるって、案外簡単なことかもしれない。
この鈴を手に入れたように。

手をあげよう。
ほしいものに手をあげよう。
やりたいことにも手をあげよう。

ちりん、ちりん。鈴の音が思い出させてくれるのです。