2015年7月

第112回
部活が育ててくれたもの



スポーツは人に感動を与えます。
日本の国技・相撲をはじめ、ワールドカップにテニスにバスケ。
プロスポーツだけではありません。素人のそれも、です。

先月、中学校の地区総合体育大会(中総体)が開かれました。
3年生にとっては大きな大きな大会です。
「負ければ引退」の部活もあるのですから。

我が家の息子は、陸上800メートルにエントリー。
夢はでっかく「秋田市1位!」。
それを掲げて、練習もマッサージも嫌いなレバーにも取り組んできました。
さあ、どうなりますか。

まずは予選。母ちゃん、緊張で何度もトイレへ。
ヨーイ、パンで一斉にスタート! 
同時に各校の応援が始まります。
みんな自分の中学が勝つように必死の声、声、声。

「今日は流す」といった割に先頭に出た息子。
動画の画面で追う私。カメラが心臓でどっくん、どっくん動くのがわかります。
その時です。画面から息子の姿が消えたのは。

なに?

転んだのです。まさかの転倒に、会場が静まりかえりました。
静粛を打ち破ったのはだんなでした。
「立て!立って走れ!」

それに応えるように立ち上がる息子。
献身の力を振り絞るもスピードは戻らず、ゴールと共にがっくり膝を落としました。

1時間後、ようやく姿を現した息子の目は真っ赤。
「何してた?」
「倉庫で泣いてた」
こんな時、母ちゃんは使い物になりません。
文章を書く仕事をしているくせに、気の利いたことの一つも言ってやれないのですから。

翌日の朝食の席で、ちょっと落ち着いた息子がぽつりぽつり話し始めました。
「あの時、お父さんの声が一番に聞こえた」
「声、でかいもんね」
「そのあと、他中の生徒の声も」
「…え?」
「友だちが、僕の名前を叫んでたんだよ」

なんと!

自分の学校を差し置いて、他校の子たちが息子を応援していたらしいのです。
それも何人も、何人も。
そうだったんだ、そうだったんだ。
学校なんて関係ない、みんなスポーツを通した仲間なんだね。
右手にお箸、左手に茶碗を持ったまま「ありがたいね、ありがたいね」とボロボロ涙がこぼれました。

部活が育ててくれたのは、気力・体力・根性だけではありません。
仲間意識や思いやりまで、でした。
息子の夢は散りましたが、それ以上のものをたっぷりもらいました。

もうすぐ中学の県総体が始まります。甲子園予選もスタートしました。
あなたも熱戦を見に行きませんか?
もれなく感動がついてきます。