2015年8月

第113回
ありがとう



あなたの好きな言葉は何ですか?
「いいね!」「最高」「棚からぼた餅」
長短様々でしょうが、こちらを挙げる方も多いのでは?
それは「ありがとう」です。
この言葉は格別です。心の底まで響きます。
先日、それを鳥肌が立つほど実感する出来事がありました。

前回ちらりと書いた中学・陸上県大会でのこと。
御所野学院男子がリレーで大会新記録。
女子では、やり始めて数か月の子が砲丸で優勝。
棒高跳びの棒が滑って息子の友達が地面に激突、救急車で運ばれるハプニングも。

陸上は個人競技ですが、種目ごとの上位者点数の合計で学校順位が決まります。
わが桜中? 強いんですよ! 女子がね(うちの子は男子)。
女の子たちは地区大会で優勝しました。県でだって通じるかもしれません。
さて、結果は?

「発表します。
女子、優勝は・・・」

手に力が入ります。

「鷹巣中学校。29点」

わっと声が上がり拍手が沸き起こる鷹巣中関係者。
と、一気に脱力の桜中関係者。

「続いて2位です」
気を取り直して耳をダンボにします。
「2位、桜中学校。同じく、29点」

「なんですと!? なぜに同点なのに、2位?」
「同じ点でも、順位が上の子の多い学校が評価がいいんだって」
「高跳びだと、2回目に跳んだ子より、1回目に跳んだ子が上」
「へ~。納得いくような、いかないような・・・」
「同点優勝でいいのにねっ」
「優勝旗が1本しかないからでしょ?」
「誰かがもう1点取ればよかったんだよ。悔し~!」

そんなおしゃべりに、ストップをかけたものがありました。
優勝した鷹巣中の女の子たちです。

県大会には「監督賞」があり、男女それぞれの優勝チーム監督さんに贈られます。
「監督賞は、秋田大学付属中学校○○先生と、鷹巣中学校△△先生です」 
△△先生が前に出たその時です。
「せーの」の声がかかりました。教え子たちです。
そうして声をそろえて一斉に言ったのです。
「△△先生、ありがとう!」

普通であれば、受賞した人にかける言葉は「おめでとう」ではないでしょうか。
それが「ありがとう」でした。

「おめでとう」なら誰でも言えます。
観客席にいる、見ず知らずの私にも言えます。
けれどこの「ありがとう」は、この日この時、当事者である彼女たちにしか言えませんでした。

それは、かんかん照りの日も雨が降る日も雪が舞う日も。
タイムが延びずに泣いた日も、0.01秒縮んで小躍りした日も。
 いつもいつもそばにいて、いつもいつも導いてくれた。
それに対する精一杯の感謝の気持ちでした。
だからこんなに心に沁みて、だからこんなに胸が熱くなったのでしょう。

悔しいのなんの言っていた母さんたちの口は、完全に止まりました。
代わりに出たのは「…いい生徒さんたちだね」
「先生も誇らしいだろうね。いろんな意味でさ」
「私らも、そう言われる大人にならなくちゃね」。

真夏の暑さを、一瞬忘れさせてくれた「ありがとう」でした。