2015年11月

第116回
信じる

 
 
あなたは、うそをつく子が、「もうつきません」と言ったら信じますか?
人をたたく子が、「これからはたたきません」と言ったらどうですか。
毎日おもちゃを出しっぱなし。「捨てるよ!」という声にあわてて「こんどから、かたづけるから~」と泣いたらどうでしょう。
私なら「昨日も聞いた!」とぷんすかすることでしょう。
そういう自分も、「目指せ、ウエスト60cm」と何度誓ったかわかりませんが。
 
大阪に10年ほど前にできた「大空小学校」。
そこは障がいのある子もない子も、同じクラスで育つ学校。
前の学校で不登校だったり、問題を起こした子も、受け入れてくれる学校です。
校則はたったひとつ。
「人からされて、いやなことはしない」。それだけです。
やぶった児童は、「やり直しの部屋」と称する校長室へ「やり直し」に来ます。
 
ある日、一人の男の子が「やり直し」に来ました。
校長先生が話を聞きます。
「何があったんや?」
「あいつ、ぼくが使てたボールを取ろうとしたんや」
「またボールか」
「ぼくが先に使てたのに」
「そうか、相手の勘違いやな」
「そんでぼくを押したりするから、ぼっかーんってなぐった」

「そうか、わかった。ちょっかい出されて腹が立ったんやな。けど、なぐるのはいいことか?」
「……悪いこと」
「せやな。殴るのはいかん。そこんとこ、謝って来いや」
 
 男の子はごめんなさいを言いに行きました。
 ところが相手はおさまりません。
 男の子の顔にパンチ一発。
 それでも足りず、間に入った先生越しに髪をつかんで離しません。
 髪をわしづかみにされた男の子は、うずくまって目に涙をいっぱいためながら耐えます。
 だって、校長先生と「やり直し」ている最中だから。
 
 その後その子は、校長室に手紙を届けにきました。
 先生はそれを読んで言います。
「えらい!『これからは暴言や暴力をしません』て言い切ってる。そこがえらい!」
 
 そして児童が職員室を出た後、言うのです。
「これで本当にあの子の暴力がなくなったら、美談やで。
これからも暴言を吐くやろ。暴力も振るうやろ。
けどな、『しません』と書いてきたそれは、今の彼にとっての真実や。一瞬の真実や。
その一瞬一瞬をどうつなぐか、や」と。
 
信じてくれる大人がいる。
見ていてくれる大人がいる。
真剣に関わってくれる大人がいる。
 
それは、どんなに幸せなことでしょう。
次の一歩を踏み出す力になるでしょう。
あの子がごめんなさいと謝りに行ったように。
 
そうだね、私もやり直そう。
「一瞬の真実」を信じる大人になるために―――。