2016年12月

第129回
「知る」より「感じる」

 
もうすぐクリスマスです。
プレゼントは決まりましたか?
 
「良質なおもちゃを子どもたちに手渡したい」
そんな思いで小さなお店「のはらむら」をオープンさせた方から、お話を伺う機会がありました。
 
「ほら、まず遊んでみて」
そうやって滑り出した西村さんの「良いおもちゃの選び方講座」。
1歳の女の子はずーっと、トンカチとんとん。
穴に青や黄色の「くい」を打っては落っことしています。
 
別な子は小さな玉がレールの上を右に左に転がって、
最後にキンコンと鉄琴を鳴らすのを聞いています。
何度でも、何度でも。
 
西村さんはそれを眺めながら、お母さんたちに静かに語りかけます。
「今お子さんたちは、五感をフルに使っています。
大人はそれにどんな意味があるのか、どんな目的があるのか知ろうとする。
けれど、知るよりずっと大切なことがあるんです。
 
それは、感じることです。
こうやって、全身を使って感じることなんです」と。
 
それを聞いて、幼い頃を思い出しました。
とんぼを数匹つかまえて虫かごに入れた時のことです。
とんぼが狭い空間を羽ばたくと、羽がぶつかりガサガサ音を立てます。
ガサガサ、ガサガサ。それが二晩ほど続き、とんぼは動かなくなりました。
それが初めて、生と死を「こういうことか」と目で、耳で、肌で感じた体験です。
 

もしそれを「生きてると心臓が動くんだよ」「死ぬとサヨナラなんだよ」と知識だけ授けられても、本当のところでの理解はなかったでしょう。
 
「知る」と「感じる」にはそれほどの違いがある。
それを西村さんは教えてくれたのです。
 
加えて。
講座の間中、不思議なことが起こっていました。
 
子ども達が、とても穏やかなのです。
自分のお気に入りに向かって黙々と集中しているんです。
だから静かな語り口でも、西村さんの声がしっかり届きます。
 
それは良いおもちゃだから?
それとも西村さんの魔法なの?
 
答えは、こんな例え話に隠れていました。
「おもちゃは離乳食と一緒です。
 離乳食って、薄味から始めますよね。
いきなり味の濃いものはあげないでしょう?
 濃い味のものからあげたら、もっともっと濃いものがほしくなります。
 
おもちゃも同じです。
 電池で動いて音が出るようなものではなく、簡素なものがいいのはそのためです。
 音も、動きも、色も手触りも、シンプルなものを選んでください」
 
 だから西村さんは話し声も小さくしていたんだ、意図的に。
 それに呼応するように、子ども達も穏やかにここにいるんだ。
 私が「なんでそんなことすんの!」「だってだって!」と大声合戦していた子育てとは大違いだな―――。
 
 感じる。
 それは、知るより大切なこと。
 遊びこむ子どもたちを見て、穏やかに話す西村さんを目の当たりにして、五感で「感じた」一日でした。
 
「のはらむら」情報
12月中旬からクリスマスフェアが始まります。
長い冬。五感を澄ませる品々が、ここにあります。