2017年3月

第132回
さあ!

 
弥生3月です。
 
三寒四温という言葉があります。
3月はまだ寒くて、4月になるとあったかくなる。
そんな意味だと思っていました。
 
だいぶ雪解けも進んだ3月の公園。
連れたワンコは木のふもとをクンクンしています。
根っこのでこぼこにつまずかないよう歩いていると、ふと娘が小さかった頃を思い出しました。ノンはよ~く転んでいたな、と。
だからいつも膝っこぞうが傷だらけでさ。
そのたび「ほら、ちゃんと下見て」って言ったっけ。
 
そんなことが頭をよぎるのは、もうすぐノンが家を離れるから。
転んでいたその足で、来月には巣立って行くからです。
 
沐浴させるたびにビービー泣いたこと。
千秋公園の鳩を追いかけたこと。
波打ち際で遊んでいて大波にひっくり返ったこと。
初めて口にした文章が「おはな、いっぱい、かあさん」だったこと。
「世界一かわいいんじゃない?」と親ばかな会話をしたこと。
 
 
小学校の入学式には手作りの真っ赤な服を着せたこと。
5年生で登校拒否になり、1年間一緒に学校に通ったこと。
中学では卓球部の部員不足で半年だけ「選手」の仲間入りをしたこと。
自己採点が悪くお通夜みたいな一週間後、無事高校に合格できたこと。

キャンプで野原に寝転がり、いつまでもいつまでも流星群を眺めたこと。
 
そうして先日。
晴れ渡った空の下、新築の香りがする体育館で高校の卒業式があったこと。
 
1人東京に出るのは不安なよう。
「こんなにお金かけてもらって、ちゃんとやって行けるかな」と涙ぐんだり。
「自分のこと『私』って言うんだ。『わたし』がいいかな、『あたし』かな」と練習したり。
 
それは親もおんなじで。
ノンがいなくなって、やっぱりさみしくなるのかな。
ご飯作る量も洗い物も洗濯物も減るんだな。
たまにはノンのところに行ってパンダでも見ようかな。
 
三寒四温。
本格的春は、寒さと暖かさを繰り返しながらやってきます。
きっと親離れ・子離れも同じこと。
さみしさと慣れと、電話と再会を繰り返しながら次へ続いて行くのでしょう。
 
ごん!
「いてっ」
足元ばかり見て歩いていたら、木の枝でおでこをしたたか打ちました。
「さあこれからは、上を向いて歩きなよ!」
そうだね、そう言って送り出そう。
心に決めた散歩道でした。