2017年6月

第135回
 残す生き方・与える生き方

 

おもちゃはお好きですか?
 
先日「ててて あそびの学校」というイベントを手伝いました。
ボードゲームコーナーあり、
壊れたおもちゃを直してくれる「おもちゃ病院」あり、
利き「酒」ならぬ、利き「木」コーナーあり。
赤ちゃんからお父さんまで、どっぷり遊べる二日間でした。
 
私の担当は、工作のアシスタント。
作るのは、TOYクリエイター・野出正和さん考案「トルネードタワー」。
支柱のてっぺんにビー玉を置くと、らせん状にぐるりと周るレールの上を、ころんころんと玉が転がり落ちるものです。
そのレールを貼りつけるのが、タワーづくりの「キモ」であり、難所のよう。
さあ、43人の子どもたちが集まってきました。
 
野出さんの説明はとてもシンプルです。
「下になる台に、柱をネジでとめます」
「そしてこの小さい木を、ふたつずつボンドでつけるでしょう?」
「後はそれを、ビー玉が転がるようにね、柱の周りにつけていくの」
そんな感じです。
隣りで聞いていてもよくわかりません(笑)。
仕方がないので、紙コップにボンドを入れて回りました。
 
ここからがアシスタントの特権でした。
野出さんが、横にいる私にだけナイショ話をしてくれるのです。
「僕が話すのはこれだけ。ラクでしょ? その方が自由度があっていい」
「『こうしなさい』なんて枠にはめたらいけないよ。遊びなんだから」
「失敗なんてないの。違いがあるだけ。だからおもしろい」
 
そのうち、「ボンドください」と紙コップを持ってくる子がちらほら。
その後喫茶店のウエイトレスよろしく、ボンドを足しに歩き始めると。
「亜紀さん」。
ふいに野出さんに呼び止められました。

「入れに行かなくていいんだよ。
ここで待っていればいいの。
そしたらさ、足りなくなった子は自分で言いに来るでしょう?
普段自分の意思を出せない子に、思いを言葉にする機会を与えてやって」。
 
ハッとしました。
それは私もわかっていたはず。
だからだんながごはん時、子どもに「みそ汁冷めてない? あっためてこようか」とか言うのを「やめてくれ~」と思っていたのに。
はは、人のことは見えても、自分のことは見えてなかったなぁ。
 
さて、ぽーんと任せた工作は。
眉間にしわを寄せる子、何度も見本を見に来るパパ、隣の人に助けを求める人…。
ああでもないこうでもないと、試行錯誤の真剣そのもの。
 
果たして1時間後。
あちこちから「できた!」の声があがり出しました。
その顔は、さっきまでとは大違い。
電球みたいにぴっかぴかに光っています。
 
そっか、そうだね。
こんなにいい顔になるのは、「自分で」やったからなんだ。
難儀して難儀して、打ち勝った自信が「発光」させてるんだ。
 
私たち大人がするのは、先回りじゃない。
困らないようにと先手を打つことじゃない。
育てたいのは、言えるチカラ、考えるチカラ。
そのためにはヘルプを求められるまで、手も口も答えも出さずにじっと待つのだぞ。
それを野出さんと、ぴかぴか笑顔が教えてくれました。
 
「サインください」
「一緒に写真撮ってください」
野出さんの元に次々に人が集まってきました。
「ぼく、芸能人じゃないんだけど」と応じる野出さんは「ほらね、言えば叶うんだよ」と伝えているようでもありました。
 
うん、以降先回りは封印せねば。
ボンドを握る手に、むぎゅ~っと力を込めた昼下がりでした。 
MUKU-studio