2017年8月

第137回
 「待ってたよ」

 
 
「おはよう、待ってたよ」
陽だまりサロンはお客様をお迎えして12年。
下の子が生まれてまた来てくれたりと、長いお付き合いになる方もいます。
あるお母さんもそうでした。
 
その方は育休中、決まってサロンに顔を出してくれました。
1人目のお子さん、2人目のお子さん、そしてこの度3人目のお子さんを連れて。
 
「3人目が生まれました~」
数年ぶりに会っても、全く変わらず。
先日会ったご近所さんみたいに、するり会話が始まります。
 
「3人目ともなると、ママ友を作ろうという気もなくなるんです。
 児童会館のイベントに行った時も、若いママさんたちがアドレス交換する中、私はなじみの職員さんとばかり話してて。『お母さんたちと話しなよ』って言われました」とか。
 
 そうは言っても個性なのか、人徳なのか。
 話し上手で聞き上手、誰にでもサラッと話しかける彼女の周りには、いつの間にか人の輪ができます。
 なので彼女が来てくれた日は一安心。
「さあさ、上がって。私の家じゃないけど」。
そう迎え入れてくれるので、ほかの用事が足せるのです。
 
 先日は、その方と会える最後の日でした。
 数日後から職場に復帰するためです。
 帰り際「しばらく会えなくなるね」と言うと、彼女はこう切り出しました。
 
「3人目の育休は…」
 そこまで来て、言い直しました。
「3人目の育休も、とっても楽しかったです」
 そっか、よかった。
 
「世の中には、いい方がたくさんいるとわかりました」
 ?
「今回も、優しい方や親切な方にたくさん出会えましたから」
「あはは、職場はそうじゃないの?」
「職場は、食うか食われるかです(笑)」。

 それを聞いて「そういえば」と思い出したことがありました。
 以前別な方も、まるっきり同じことを言っていました。
「私ね、育休中にわかったことがあるの。いい人っていっぱいいるんだ、って」と。
 
陽だまりを始めてから私も、ここでそんな方にたくさん出会ってきました。
「みんなで食べようと思って」と、忙しい合間を縫ってケーキを焼いてくる方。
 トイレ中の母親を追って泣く子を、「ほ~ら、車が見えるよ」とデッキに連れ出す方。
 右膝に自分の子、左膝に居合わせた子を抱いて絵本を読む方。 
 
 息子の小学校の卒業時、男の子が「おめでとう」と息子に一輪、花をくれました。
娘の高校受験の頃は、「家庭教師しましょうか」と申し出てくれた方がいました。
 だんなの単身赴任にあたっては、東京に発つ彼をみんなが見送ってもくれました。
 
自慢じゃありませんが、とっても自慢のお客様たちです。
 
 最後に彼女が言いました。
「3人目の育休は陽だまりに通い詰めでした。
 お世話になりました」
「うん、また会えるかな。会えるよね」
 
歩き始めた女の子。
柱の陰から顔を出し、お客様といないいないばあをして笑っています。
 
「次会う時は、どれくらい大きくなってるだろう。
それまで元気でね」
「はい、ありがとうございました」
 ひょいっと女の子を抱き、振り向きもせず去っていく背中。
 
うん、あなたならきっと大丈夫!
 食われず進んで行くんだぞ。
 そうしてね、疲れた時は戻っておいで。
 いつもいつでも迎え入れるよ。
 
「おはよう、待ってたよ」。