2015年12月

第117回
不便も、またよし!

 
 
当たり前に目の前にいた人がいなくなる。
当たり前にしてきたことができなくなる。
当たり前に使っていたものが使えなくなる。
そこで初めて、その大きさを知る。
あなたは、そんな経験をしたことはありますか?
 
いやですね、この寒空の中、うちのボイラーが壊れたんです。
小さなことかもしれませんが、大きなことでもあります。
お年頃の娘もおりますし、汗臭い息子もおります。
「ぱんぱかぱ~ん♪ 重大発表です! 今日、お風呂に入れません」
「え~。地獄のシャワーだあ!!」
プールの前に浴びるシャワーを、そう呼んでいるようです。
 
さてこの地獄のシャワー、チャレンジしたのは息子だけ。
唇を青くして、「さびー、さびー」と出てきました。
娘は手堅く、やかんにお湯を沸かします。
けれど、洗面器に「ちょうどいいお湯」を作るのに一苦労。
「結局、髪は水で洗った」とか。
そんなこんなでボイラー交換までの4日間、不便な思いをすることになりました。

けれどです。
良かったこともありました。
故障2日目(金)、テストで早帰りの娘と温泉へ。
温泉を恥ずかしがるようになってから、実に5年ぶりです。
あがってから二人で半分こした、アイス大福のおいしかったこと!
 
故障3日目(土)、娘と実家でお風呂を借りる。
片道1時間なのに、実家行きも娘にとっては久しぶり。
部活やテストがあって、なかなか行けなかったのです。
「おばあちゃんに会うの、いつぶりかな」
「3月に髪切ってから見せてない」
「へ~、じゃあ9か月ぶりか」
「修学旅行のお土産が渡せるゥ!」
孫の顔が見られた両親は「来たか、来たか」と大喜び。
 
4日目(日)、家族みんなで温泉へ。
遅くまで塾のため水シャワーだった息子も、大きなお風呂へGo!
地獄から一転、「ごくらく、ごくらく」とつぶやいていたそうです。
 
子どもが育つと「みんなでどこかへ」も激減し、母ちゃんちょっとさびしかった。
ボイラー故障が、思いがけず「家族一緒」を生み出してくれました。
「お母さん、みんなで何かするのも、いいね」
「でっしょ!」
お湯が出ないのは不便だけれど、心ほっこり。
32万はアイタタですが、お金に変えられない幸せを感じた出来事でした。