子育て相談室-児童期 2008年12月

父親の役割


 男の子育て参加を求める風潮があります。父親不在に警笛が鳴らされています。一方で、父親の過干渉が関係していると思われる、子どもによる事件があります。わたしの子はまだ小学生ですが、このような社会現象を見ていると、子どもとの距離の取り方に不安を感じます。父親はどのような存在であるべきなのでしょうか。


「モーレツ」から「やさしさ」へ


 いま30代、40代の親の、その父親はどのような存在だったのでしょうか。30代の知人に自分の父親の姿を聞いてみました。「マナーやルールに厳しかった」「勉強を教えてくれた」「いろいろな体験をさせてくれた」といった話が聞かれました。社会のルールなどを教え、知識や体験などを通して子どもの世界を広げる父親の姿があります。そして「優しい人」と続きました。ところが、40代の知人の感想は異なります。複数の人たちが、父親は家にいなかった、休日は寝ていたなど、親子の関わりの薄さが目立ちます。

 1960年代は、「モーレツ社員」が当たりでした。そのあとの1970年代になると、「ビューティフル」や「やさしさ」が時代のことばになりました。時代のことばには、時代精神ともいうべき価値基準が反映されているといわれます。父親とはいっても、その時代の価値基準から逃れられず、色濃く影響されるのは確かなようです。

モデルの「父親像」がいない、現在の父親


 精神分析で有名な、ジークムント・フロイトは父親の役割を思わせる「超自我」という概念を伝えました。超自我は自分に対して、社会のルール、道徳観、倫理感を守ること、自己コントロールの大切さを強いるとされます。社会生活に必要なことともいえる「超自我」の働きですが、ルールや道徳観などが統一され安定している時代では、安定して機能することでしょう。

 しかし価値観が多様化し、ルールも道徳観も変化する時代にあってはどうでしょうか。さまざまな事柄に対し、自信をもって判断できない状態となります。先に述べましたが、父親の役割も時代によって変わります。自信を持って判断できない状態は、堅固で安定した価値基準を持っていない、現在の父親の姿ともいえます。

では母親の役割はどうなのか


 これについては、子どもに対して「支配型」とか、「母子一体型」であるなど、問題とされる母親がいます。しかし、育児・養育機能や、感情の豊かな交流などの面では、おおきな揺らぎはないように思います。期待される母親の役割は安定している、といえます。

父親の役割とは何か?


 母親のように、友だちのように子どもと付き合うというのが、新しい父親像ともいえます。ただ、これに満足する母親や子どもは少なく、臨床の場での母子は、父親に社会のルールや厳しさを教えることを求めています。社会の変化に強い、懐が広いなど、新たに求められている父親の役割はありそうですが、一人の父親でもある筆者にも、ちゃんと描ききれないのが現状です。