最近「子ども事情」AD/HD の理解と対応 2002年1月

第5回目
AD/HD の原因について



 前回は、多動症候群の三つ診断基準のほか、さまざま特徴にについて述べました。今回は、 AD/HD の原因について述べます。 

多動症候群の原因

 多動症候群の原因として、さまざまな説が考えられてきました。砂糖のとりすぎ、という説もその一つです。確かに、疲れたときに甘いものを食べると元気になります。この砂糖をとりすぎれば、元気が出すぎて多動になる、との説にはうなずける部分があります。でもこの仮説は、科学的な実験によって否定されたそうです。

 薬物を始めとして、さまざまな有害物質が原因なのではないかとも考えられています。しかし、多動症候群を引き起こす原因物質は、まだはっきりとわかってはいません。ただ、いくつかの物質が、複合的に作用して AD/HD を引き起こしているのでは、という可能性は捨て切れません。

 なお、脳の働きに問題があるから起こっているのは確かです。たとえば不幸にして、交通事故などで脳に損傷を受けた人達がいます。このなかに、 AD/HD に特徴的な症状を示すようになる人達がいることが知られています。

 このようになった人達が損傷を受けた部位は、脳でいえば前の脳の領域で、前頭葉といわれる部分です。ある研究によれば、子どもの多動症候群のうち、5〜10%が脳損傷を原因とするといわれています。多動の子達の場合、この前頭葉の働きが不活発なことが、脳波の研究などでも明らかになっています。

有効とされる薬について

 ご存知の方も多いかと思いますが、 AD/HD の子どものうち、七十〜八十%の子に有効とされている薬があります。この薬は、脳のなかの神経伝達物質に作用しているといわれています。

 このこともあり、多動は脳内の伝達物質の過不足が原因とも考えられています。たしかに、薬を飲みだした途端に、急に行動が落ち着き、学習の成果が上がる子がいます。

 ただこの薬は、脳の働きに直接影響を与えるものです。また、子どもが長期間服用しても大丈夫なのかという点について、十分に研究がなされているとはいえません。子どものなかには、食欲不振やだるくなるなど、副作用があらわれることがあります。服用にあたっては、医師とよく相談する必要があります。この他にも、いくつかの原因仮説があります。ただ、確実な原因はまだわかっていません。 

遺伝との関係


 両親などに多動傾向があると、子どもがその傾向を受け継ぐ可能性があるといわれています。親のなかには、「自分の子どもの頃とそっくりだ」という人もいます。子どもと同じ薬をのみ、それで自分の精神状態がよくなったというお父さんもいます。このようなことから、 AD/HD は遺伝する部分があるといわれています。