最近「子ども事情」AD/HD の理解と対応 2002年4月

第7回目
自己コントロール力の問題


 最近の研究では、 AD/HD は「多動性、注意力、衝動性の問題」というよりも、それらを統御する「自己(セルフ)コントロール力」の障害と考えられるようになってきました。

 たとえば、何かを教えているシーンを想像してみましょう。ここでは、料理の場面とします。多動な子ども達はきっと、キッチンを動き回り、道具や材料を次々にさわっていきます。そして、自分勝手に食べ物を切り始めたりします。思いのままに、失敗などおかまいなしに進めていきます。結局は、強く叱られないと動きは止まりません。

 人間は、成功を願い、失敗を回避する存在といいます。成功するためには、それ相応のセルフコントロール力が必要です。ところが多動な子達は、このセルフコントロール力が弱く、たとえば自分の動きが止められません。注意はそれやすく、人の話をちゃんと聞けなかったりします。それに、衝動的に手が出てしまいます。

 特に目立つのが、待つ姿勢の不足です。このために、じっくりと見て学ぶ、いわゆる「観察学習」の間がありません。当然、正しいやり方を学べず、失敗が多くなってしまいます。

失敗なんか関係ない?


 ある子達は、「結果にこだわらず」、失敗しても平気のように見えます。反省など、まったくしないかのようです。その上に人の意見を聞き入れない子が多く、何度やっても成功できなかったりします。

 失敗が続くと、ある子達は、興味と意欲を一挙に見せなくなります。できないとわかると、ある子達は、自分の仕事を放棄し、まわりの子などをからかい始めます。その場をひっかきまわすことの方に、熱中しているかのように見えます。子ども達は、成功など関係ないかのようです。表面的にはそう見えがちです。ところが本心はそれとは違い、失敗したことをちゃんと認識し、やり遂げられない自分にうんざりしていることが多いのです。

厳しい自己評価


 私達はクリニックの中だけでなく、多動な子ども達と一緒に合宿をしたりしています。合宿に入る前に、子どもに自分の目標を立てさせます。たとえば、「行き返りの電車の中で騒がない」といった目標です。

 合宿の夜、寝る前に目標の達成度について自己評価をする時間があります。私達は、はじめは、子ども達は自分の都合のよいように、いい加減に評価するだろうと予想していました。ところが、その予想は見事に裏切られました。子ども達は、自分のやったことを、ほぼ正確に覚えていました。そして、目標達成できなかった自分について、厳しい評価を下していきます。

 このような体験もあって、子ども達のつらさ、しんどさ、大変さについて、さらに思いが深まるようになりました。いまでは、多動な子ども達も同じように、成功を願い、失敗を回避したいと思っていることを確信しています。ただ、成功にいたる道のりが容易ではありません。ふつうの子達よりも、何倍も何倍も険しいのです。