最近「子ども事情」AD/HD の理解と対応 2002年8月

第10回目
親の言うことをきかない…1



 AD/HD の子どものなかには、お母さんにとても反抗的という子がいます。お母さんがいうことに、どうしてそこまでと思うほどに、いちいち逆らいます。一方で、お父さんへの口答えはさほどでもなかったりします。なかには、父親の前では人が違ったよう素直になる、と話すお母さんもいます。

感情的に対応しないこと


 この「母親のいうことをきかない」という特徴については、 AD/HD の世界的権威であるバークレー博士も指摘しています。バークレー博士は、その理由として、「 AD/HD の子どもを持つ親は、ほかの親とくらべて、口やかましく、より指示的、拒否的で、ときには子どもに対して無頓着で配慮に欠けている」ことをあげています。ただこれらのことも、薬物療法などで子どもの状態がよくなれば、ふつうの親達にグンと近づくとも述べています。

 なお、反抗的ではない AD/HD の子どもの親は、ふつうの子の親と同じとされています。どうも、子どもにまず原因があり、それに反応して母親が感情的になってしまうというのが真実のようです。  

 さて、子どもが母親の言うことをきかないと、毎日の生活は大変です。特に AD/HD の子どもからは、「あとで」「待って」ということばがよく聞かれます。大人から言われたたことをすぐにやりません。このことが、母親の感情を高ぶらせ、家の中で大騒ぎが繰り返されることになります。

 なお AD/HD の子は、ちょっとしたことでも感情的に反応しがちです。感情をさらけ出すことが、もっとも重い問題と考える専門家もいます。この面を助長しないための対応の原則は、感情的に話さないことです。

父親に理解してもらうこと


 私達のクリニックでは、反抗的な AD/HD の子の場合は、ご両親に来てもらい話をすることにしています。その理由のひとつに、この「母親のいうことをきかない」という特徴を、お父さんに説明するこ とがあげられます。

 父親は、反抗をしめす子どもと、感情的になりやすい母親の対応を見ます。その結果「母親が感情的になるから子どもが反抗する」と考えがちです。

 仕事から帰っても、家の中では言い争いが絶えず落ち着かない、と父親は嘆きます。この状態が長く続くと、家にいるのが億劫になります。このことも影響してか、アメリカでの調査では、 AD/HD の子どもを持つ親の離婚率は高いとされています。

 父親のことばには耳を傾けがちな AD/HD の子どもたち。父親が加わることで、家族で冷静な話し合いができたりします。思春期を乗り越えていくときのことも含めて、 AD/HD の子どもを上手に育てていくには、父親の理解と協力が不可欠といえます。

☆引用:R.A.バークレー著,海輪由香子訳「AD/HD のすべて」 VOICE 発行 2000 年