最近「子ども事情」AD/HD の理解と対応 2002年12月

第12回目
漠然とした注意と急ブレーキ反応


 ルールが守れない、お友達に乱暴するといった問題を抱え、来院する子どもが増えています。他の子にけがをさせたりする子どもの、特に母親は、苦情の電話への不安で、毎日びくびくしながら過ごしているともいいます。地獄のような日々、と涙する母親もいます。

 自己コントロール力が弱い、衝動性の強い子は、集団の場面でトラブルを起こしがちです。特に、不注意と衝動性を示す『混合型』の子が問題となりやすいようです。こういう子の場合、まずは衝動的な行動をコントロールできることが目標となります。ただ、一方的に叱りつけ怒っていても、なかなか改善されません。ここで、「不注意」に目を向けると、子どもたちの問題が違って見えてきます。

「漠然とした注意」が払えない


 大阪教育大学の竹田契一先生は、ある講演会で、問題を抱える子には「知っている感じ」が持てない子が多いと話されています。たとえば園や学校で子ども達は、先生の話を一言一句洩らさずに聞いているわけではありません。ただ、聞いたな、何となく知っているなという感じを残します。私たちは、いつもいろいろなことに「漠然とした注意」を払っています。「知っている感じ」が残るのは、漠然とした注意を払っている証拠だともいえます。

 ここで、車を運転するときのことを想像してみます。運転しながら、信号や飛び出してくる車や人に、常に気をつけています。同時に、速度違反をしないようにと、交通法規を意識したりします。その一方で、次の用事のことを考えたりします。ここで急に、前の車が停車したりすると、意識はすぐに運転に戻り、反射的に急ブレーキを踏んだりします。

唐突に襲ってくる世界


 あたりに漠然とした注意を払えないと、何事も「唐突に起こる」感じがするのではないでしょうか。たとえば、先生が「隣の子と手をつないで」と言ったとします。それを知らないときに、他の子から急に手を取られたりすると、「突然された」という感じがあっても不思議ではありません。

 順番に並ぶときにも、子どもたちは他の子たちの様子を見ながら、列を作ったり、離れたりします。何となく「場の流れ、雰囲気」を読んで動いています。この読みができない子は、急に割り込んだり、列から離れても平気なのでしょう。問題になる突然の乱暴も、不注意が原因の、本人にとっては「急ブレーキ」のような反応なのかもしれません。

効果的な薬物療法と驚かせないこと


 さて、このような不注意を持つ子ですが、薬物療法が有効な子が多いようです。なお、日常的な付き合いですが、私達はなるべく驚かせないようにしています。たとえば、緊急時以外は大声で呼んだりせず、前に立ち、静かに話し掛けるようにしています。びっくりさせ続けると、子どもから警戒され、また嫌われてしまうようだからです。