最近「子ども事情」AD/HD の理解と対応 2003年6月

第15回目
「待てる」子に



クリニックでは、子ども達の発達レベルや理解力を知るために、心理検査を受けてもらうことになっています。この検査では器具を使ったりもしますが、多動な子ども達はすぐに手を出し、器具に触ろうとします。これは共通の行動で、こういう姿が見られると AD/HD をまずは疑います。

待つことを教える


 多動な子どもへの指導は、「待つこと」を教えることが第一歩となります。それは幼児でも学童でも同じです。「手はひざ」にして、指示を待てるようにしていきます。これができないと、遊びも学習もスムーズに進みません。子どもの動きに振り回されてしまいます。

「ダメがわかること」と「参照行動」


 子どもの発達には、年齢ごとに重要なポイントがあります。たとえば、社会性の発達では生後 6 ヶ月頃から「だめ」がわかりだします。子どもは、「だめ」といわれると自分の動きを止められるようになります。あわせて「よいこと」「喜ばれること」もわかってきます。大人がほめると、赤ちゃんはかわいらしい芸を見せてくれるようになります。

 「喜ばれること、だめなこと」の存在がわかってきた子どもは、 1 歳前後頃から大人の顔色をうかがうようになります。これを「社会的参照行動」といいます。子どもは動きを止め待ちながら、やっていいかどうかを目で大人に確認したりします。また、自分がやったことへの評価を求める姿も見られるようになります。参照行動が盛んになる頃から、子どもの人から学ぶ力はグーンと伸びてきます。「待つ力」の高まりと学習できる力には、深い関係があります。

待てないから学べない


 さて多動な子の場合はどうでしょうか。「だめ」といっても、動きがなかなか止められません。待てないために順番を守れず、集団での活動ではトラブルにつながったりします。失敗が多いのも、人のやり方をよく見ないでやってしまうからです。じーと見続けるためには、待つ力が必要です。

 大人の目を意識する力が弱いので、自分勝手に行動してしまいます。よその家で、冷蔵庫から無断でジュースを飲むという子もいます。人の物を勝手に使うなどもその例です。

 話は変わりますが、盲導犬の訓練は「ステイ(待て)」を教えることから始まるそうです。待てない犬は、学べないということなのでしょう。多動な子どもも待てないために、人からなかなか学べません。

くらしの中で意識し教える


 多動な子の場合、待てないことがさまざまな問題につながります。これを解決するには、日常の中ですぐに手を出さずに待つことを教える必要があります。また勝手に何かをやったり使ったりせず、大人に確認を求めるように教えます。子どもの待つ力を高めるには、これらの積み重ねが大きな力となります。