最近「子ども事情」AD/HD の理解と対応 2003年8月

第16回目
競争時代(上)


 子どもたちは、一般的には四歳前後から「競争時代」ともいうべき時期を迎えます。ほかの子どもと競争することに熱中し、勝ち負けの結果に一喜一憂の姿を見せだします。ときには、負けた悔しさでおお泣きしたりします。 この段階に入ると、子どもばかりでなく大人も競争相手と見なされます。

 たとえば「早く着替えなさい」「さっさとお風呂に入りなさい」と大人が一方的に指示すると、子どもは反論したり無視したりします。この以前には、同じことをいわれても素直に行動していた子どもが変身します。いうことを聞かない姿に、ついつい感情的に命令すると、さらに頑固に反抗したりします。

 この頃の子どもは、大人のいうとおりにすると「負けた」と思うようです。この気持ちのために、指示に素直に従えません。

すべてを「勝ち負け」でとらえる


 多動な子どもたちにも、この時代がおとずれます。たとえば、車の乗り降りの場面です。あるお父さんから聞いたのですが、多動なわが子は誰よりも先に車に乗りこもうとするそうです。車からおりる時も同じで、停車と同時にシートベルトをはずすとのこと。このような姿が毎日いろいろな場面で見られ、何でも一番でないと気がすまないとのことでした。

 多動の子達のなかには、同じことを繰り返し考えてしまう子がいます。ひとつのことを考え続けられる力は、好きなことへの並外れた集中力につながったりします。ただなかには、「競争すること」に集中が向かってしまう子がいます。そうなると、朝から晩まで競争することが頭から離れません。そういう子にとっては、学校や園など子どもが集まる場所はライバルばかりとなります。

 競争の結果に対して、落ち着いた態度でいられれば問題はあまりありません。しかし多動な子は結果に執着し、「一番、早い、勝った」でないと気がすみません。負けると大騒ぎとなり、なかにはほかの子や物に八つ当たりする子もいます。このために、学校や家庭で騒ぎがたえない状態になってしまいます。

成長しにくい結果への態度


 まわりの子達は、あまりの騒ぎように白けたりします。負けたときの大騒ぎは、おおむね幼児期で卒業するものです。子どもたちは経験のなかで、結果にこだわりすぎると、みんなと楽しめないと考え出します。何よりも、泣いたり騒いだりする姿を人前にさらすのは、恥ずかしいことだとの認識が自制を働かせます。

 ところが多動な子どもは、勝負に興奮しすぎてまわりの子たちの気持ちなど考えられません。人の目を意識する力も弱いので、泣いたり騒いだりしても苦になりません。これらのために、小学校の高学年まで大騒ぎが続くことがあります。

 このような「競争時代」ですが、発達的にはいろいろな意味や役割をもつ時期と思われます。それらを踏まえての対処法について、次回以降で紹介します。