最近「子ども事情」AD/HD の理解と対応 2003年10月

第17回目
競争時代(中)



前回、多動な子が示す競争時代の姿について述べました。多動な子どもたちのなかには、競争や結果に強いこだわりを示す子たちがいます。そのこだわりが、子どもたちを不適応な状態へと追い込みます。

約束を守ること


 競争の時代に入った頃から、子どもたちはルールや約束が守れるようになります。ルールを理解し、守れなければ競争が成立しないからともいえます。競争時代の子どもは、大人の一方的な命令に対して、しばしば反発します。ところが、あらかじめ約束を交わしておくと、素直な姿を見せることが多くなります。

 たとえば「ご飯を食べたらお風呂に入る」という約束をしておきます。食べ終わってもお風呂に入ろうとしないときには、「お風呂に入りなさい」ではなく「お約束は何だった?」とたずねます。大人との競い合いに過敏な子どもも、約束を守るかどうかは競争ではありません。だから素直に行動できます。なお約束は、子どもにいわせて(宣言させて)おく方が有効です。

よい態度を具体的に示す

 一般のクラスで問題を起こすので、週の内の何時間かを、情緒障害児学級で過ごす AD/HD の子がいます。この学級では、個別や小集団での指導をおこなっています。競争の際の態度、特に負けたときに騒がないことを目標に、指導に取り組んでいる学級もあります。

 ある学級では、先生と子どもでカードゲームをおこなっています。ゲームの前に、負けても騒がないという約束をしておきます。そしてゲーム中の姿をビデオにとります。終わったあとに、ゲーム中や負けたときの態度がどうであったかを、ビデオを見ながら先生と子どもで批評しあいます。こうやって、自分の言動を客観視する力を養います。良い態度とはどういうものかを、子どもに具体的に教えるのに効果的な方法のひとつです。

弱い仲間を思いやることから道徳心へと


 競争には必ず敗者が生まれます。子どもたちは 4 歳ころから、負けた子に対して慰めや励ます姿を見せだします。「上手」「うまいね」とほめるようにもなります。 AD/HD の子どもは、ほかの子に対してこのような姿をなかなか見せません。競争をみんなで楽しむのでなく、自分の結果にばかり気持ちがいきます。

 AD/HD の子には、競い合いの場面で、ほかの子どもを見るようにうながす必要があります。また、励ましたりほめたりすることも教えます。このような思いやりを含め、仲間との気持ちの交流が、強いこと、早いことがいつも良いのではないことを理解させます。この理解が、「正しいことが良いこと」という道徳心にもつながるのだろうと思います。

 競争時代は扱いにくい時代です。しかし約束を守ること、よい態度を学ぶ、また道徳心の土壌作りの時代でもあります。 AD/HD の子にとっても同じで、重要な時期といえます。