最近「子ども事情」AD/HD の理解と対応 2003年12月

第18回目
競争時代(下)


 競争の時代について、 2回にわたって述べてきました。AD/HDの子どもは、この時期にとどまる時間が長く、このことが学校などでの不適応につながる傾向があります。大人になってもこの時代から抜けられない人もいます。心のなかではいつも他者と競争していて、何事も勝ち負けで判断します。ほかの人をほめたり、慰めたりすることもできません。

競争の時代と「ふざけっこ」のすすめ


 乱暴が問題で、クリニックに来る AD/HDの子どもたちがいます。こういう子どもたちをグループで遊ばせてみると、それほど乱暴なことはしないことに驚きます。活発に動きながら自制があり、互いに声をあげるほど興奮しながらも、ある種の節度があることを感じます。子どもどうしでの遊びは心から楽しそうであり、人生をまるごと謳歌しているようでもあります。

 そういう姿を見ていると、その陽気さに気持ちがなごみます。それとともに、こどもにとってじゃれあったりふざけたりすることの大切さを思います。

 子どもは、じゃれあうなかで裸の付き合いを体験します。ほかの子と一緒に遊ぶことで得られるこの上ない熱い喜び。相手を必要とする喜びを知ることは、その後の人との関係に良い影響を及ぼすでしょう。

 子どもが熱中する、戦いやプロレスごっこは、実はとても痛いものです。考えてみれば野球もサッカーも、ボールを受けたり蹴ったりしながら、からだにとって、物理的には痛いものです。その痛みを忘れさせるのは、仲間と競い合うことの楽しさ、勝つことへの熱中です。それとともに、痛みを与えている相手に「悪意がないこと」を子どもは学びます。悪意の有る無しにも気づかせる「ふざけっこ体験」は、人への心底ぬくもりのある信頼にもつながると思います。

すべてを悪意にとってしまう


 たとえば満員電車の中で、ほかの人から押されたり、かばんがあたったりしたときに、「ケンカを売られた」と思ってしまう青年たちがいます。

 満員電車のなかで、仕方なしに起こったこととは思えません。ほかの人から、ちょっとした助言や注意を受けると、すぐにカーッとなってしまう人たちもいます。 AD/HDがあると、ときには衝動的な行動につながってしまいます。

 競争心が強く、勝ち負けにこだわっていると不要のトラブルを起こしたりします。このような青年たちに話を聞いていると、自分に対する人の言動について、「悪意」を感じていることがわかります。気持ちが安定しないときには、悪意を強く感じ、爆発的行動になったりするといいます。

 親は、子どもと一緒にふざけっこをいっぱいやりましょう。また、ほかの子たちとじゃれあい、ふざけられる場を意図的に作る必要があります。そういう経験を通し、勝負へのこだわりを減らし、何事も悪意にとってしまう芽を早いうちに摘みとりたいものです。