最近「子ども事情」AD/HD の理解と対応 2004年8月

第22回目
大人の役割(上)


 3回にわたり、小学校から中学校にかけて現れやすい問題をとりあげてきました。また、問題への対応法についても幾つかふれました。さてこれから2回にわたり、AD/HDの子を取り巻く大人の役割についてお話していこうと思います。

変わる子どもたち


 これまで16年間、都内のある区より委任され、保育園での巡回相談を行って来ました。週に一度園を訪問し、発達相談に応じています。この相談ですが7、8年前から、大きく様変わりをしてきました。巡回相談のもともとの対象は、自閉症、ダウン症など、障害の認定を受けている子たちでした。ところが最近は、障害を持つ子が1とすると、その2倍から3倍の人数で、AD/HDなど行動や社会性に問題を持つ子の相談となっています。学級崩壊が注目される以前から、幼児たちが変化していました。その姿から、その後の学校生活を心配した専門家は多かったと思います。

 ではどうして、このような子どもたちが目立つようになり、また相談が増加してきているのでしょうか。これについては、はっきりとした理由はわかっていません。ただ経験的に思うのは、子どもよりも大人側の変化の大きさです。その変化はたとえば、「親の意識が薄くなった」とか、「子育てに余裕がない」などといわれたりします。これらは、言葉を変えれば「子育ての基本の考え方が理解されなくなった」といえるのではないかと思います。

「発達」の目的とは


 発達の目的は2つとされています。1つは、子どもが自分で考え判断し、行動できるようになることです。これを「自己形成」といいます。もう1つは、形成された自分を社会のなかで活動できるようにすることで、これを「社会化」といいます。子どもの、自己形成と社会化を進めるのが大人の役割といえます。

子どもは大人に判断基準を求めている


 自己形成にあたっては、自分なりの判断基準を持つことが重要な要素です。発達的にみると、子どもは2歳前後から【良いこと・ダメなこと】を知り、3歳では【ルールを守ること】、4歳では【苦手なことでも挑戦する】ようになります。5歳前後からは、道徳的に【善いこと・悪いこと】の区別がつきだします。これらのことを一つ一つ学ぶことで、自己形成を高め社会化も進みます。この学びのときに、子どもは必ず親をはじめ回りの大人に、どのような判断がよいのか確認を求めます。社会化にとって必須のことだからです。

はっきりとした判断を


 子どもに振り回されず、「やっていいこと・いけないこと」を大人は真剣に、きちんと教えていくべきです。それが、子どもの自己形成と社会化を促します。これだけでも、多動の子の行動は、かなり改善されるでしょう。子どもは、的確な判断ができることで自信もつけ、気持の面でも落ち着いてきます。