最近「子ども事情」AD/HD の理解と対応 2004年10月

第23回目
大人の役割(下)


 子どもは大人に判断基準を求めている、と前回述べました。判断を、子どもに委ねてばかりいると、子どもは適切な判断が学べません。そのために、「やりたい放題」となってしまいます。一種の無秩序状態といえます。

「子ども主体」は何でもOKではない


 子どもの心理療法のひとつに、「遊戯療法」があります。全面的に受容することが原則といわれます。ただ療法を受けるには、守るべき前提条件があります。時間を守ること、部屋から出ないこと、人や物を傷つけないことの3つです。つまりは、社会的なルールを守らないとセラピーは受けられません。

 ある中学1年生のAD/HDの子の話です。彼は、好きな授業しか受けません。気に食わないことがあると学校から帰ってしまいます。先生が注意すると大騒ぎです。こういう状態が続くので、担任の先生が相談に来られました。

 この子が、学校で勝手な行動をとるようになったのは小学五年の時からでした。担任の先生が、情緒的に不安定だからと彼の勝手を許してしまいました。このために「学校難民」となってしまい、いまもその状態が続いています。子どもを全面的に受容する、子どもの判断を尊重すると考えた結果がこれです。誤解しながら適用すると、ときにはこのような子どもを作ってしまいます。

 いま中学校の先生達と、彼が授業に参加できるようさまざまな取り組みを行なっています。行動の枠組みをはっきりとさせ、それを守らせきるというのもそのひとつです。こういう取り組みのなかで、彼は落ち着きを見せだしています。大人が社会化という視点を忘れ、気持重視に走りすぎると、このような悲劇を起こしかねません。

認めることの大切さ


 赤ちゃんは、「ダメ」という禁止の言葉に動きを止めます。禁止の言葉は「抑止・抑制の言葉」でもあります。ほめ言葉はこの反対です。ほめられると、嬉しくなってもっとやりたくなったりします。ほめ言葉は、動きを「促進する言葉」といえます。

 多動な子には、「ダメ」の言葉かけになりがちです。抑制系ばかりで、動きの多い子はなかなか守れません。子どもの喜ぶほめ言葉で、望ましい行動を促進・定着していくという、逆転の発想も必要です。なお、子どもが嬉しくなるほめ言葉ですが、成長につれて内容が変わります。「マル」→「お兄さんだね(大きくなったことを喜ぶ)」→「上手になったね(上達できたことが嬉しい)→「さすが〜だな(年齢相応であることで満足)」と変化します。

 これまで2回にわたり、大人の役割について述べてきました。判断基準を示すこと、枠組みを決めること、ほめながら望ましい行動を促進することの三つです。このような関わりのなかで子どもは、自分の存在を認められているとの実感が持てるようにもなります。