最近「子ども事情」part 2 2006年1月

第5回目
発達障害バブル


 その子は、園庭で砂あそびをしていました。熱心に、高い山やトンネルを作っていました。入園して10日あまり、いっしょにあそんだりお話しをしましたが、ちょっとマイペースかな、くらいの印象の子でした。そして3歳1か月のその子が、巡回相談の対象でした。不思議な気がしました。

 お母さんの話しを聞き、驚きました。その子は2歳9か月のときに、著名な2人の医師から、「高機能自閉症」と「AD/HD」という別々の診断名を受けました。お母さんは、わが子は理解力のわりには聞き分けがないと感じていました。友だちのすすめもあり、一人の医師のところにいったら「高機能自閉症」、びっくりしてさらにもう一人の医師を訪ねました。

 そのときは、子どもの体調が悪く診察室で落ちつかなかったそうです。そしてAD/HDの診断を受け、帰りにはリタリンという薬を持たされたといいます。この薬はAD/HDに効くとされています。1回だけの診察で、それも1か所のみで判断しての処方です。

 育児相談気分での受診から数か月。お母さんは精神的に不安定になりました。お母さんは結局、薬は飲ませなかったそうです。子どもが「困っている、何とかしてほしい」というまで待つことにしました。

 なお、医師からはどういう状態だから服用が必要であり、どうなったら止められるかについて、明確な説明がなかったといいます。これも服薬拒否の大きな理由だったそうです。いつまで飲み続けるかわからない薬。それも抗精神薬です。3歳にもならない子どもに飲ませることを、親がためらって当然です。

 10日ほどの保育で、園の先生たちはこの子の状態を把握しました。その結果、もっと手がかかる子がいると話します。そして、診断名と薬への不信を露わにします。

 保育、教育、福祉の現場では、発達障害の診断名が横行しています。自閉症との診断名があれば絵カードに写真の予定表です。AD/HD といわれれば、枠組みや○×評価です。自閉症とはいっても一人ひとり違います。診断名が一人歩きすると、子どもの一生は先入観に包まれたものになる可能性があります。

 診断名は、決して絶対的なものではありません。AD/HD はあまりにも乱発されることもあり、見直しが検討されているそうです。ゆくゆくは消滅するかもしれない診断名です。

 アスペルガー症候群は気質の範疇であり、発達障害のひとつとすることに、医師の間でも根強い反対があると聞きます。

 子どもの発達を願う大人に重要なのは、診断名ではありません。子どもの性格は? どんなものが好き? 得意なことは? 苦手は何? どういう話し方ならコミュニケーションが取れる? 何を考えている? といった視点こそ、子どもの理解には必要です。医学モデルに振り回されることなく、保育・教育・福祉の視点からのモデルで考え判断し、子どもと関わっていくべきでしょう。

 「発達障害バブル」と評される現在。無責任なバブルの犠牲者は、次の世界をつくり出する子どもたちとなります。